建国祭

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建国祭

 現代日本では普通の女子高生だった私、市綱(いちずな)エリカは、目覚めたらゲーム世界の蒸騎(スチームナイト)、主人公機ロボのAIへ転生していた。  さて帝都の城壁の片隅で静かに錆朽ちている目の前の鋼の機械は、帝国建国前に作られた蒸騎の元祖となる機体、オリーブ。    ただオリーブは蒸騎と呼ぶには余りにもお粗末で、蒸気で鉄球を打ち出すだけの機能しかない上に、自力では動けず人力で数人が引っ張って移動させる必要がある、言ってしまえば人の形を模しただけの只の砲台。  それでも当時は最先端の技術であり、街を支配していた共和国の軍勢を追い出すのに大きな役割を果たした。  後にこの街を基点に国が築かれた事から、今は帝国の建国の英雄として祀られている。  なおその共和国はその後逆侵略されて今では帝国領の一部となっているのだから、国の歴史というのは実に諸行無常で盛者必衰、数奇なものである。  さてそんな英雄オリーブは普段は記念碑として時々人が訪れる程度の錆びた鉄塊であるが、年に一度、数日がかりで行われる帝国建国祭の主役でもあり、この時ばかりは有志により綺麗な装飾がされ、周囲には多くの人が詰め掛ける。  そしてゲームの外伝小説では今日の建国祭初日が、主人公でまだ少年のトールが辺境の田舎から出て来て、帝国の皇子だと知らないヴァーリと初邂逅する日にもなっている。  さてここまでの話を聞いて、ある違和感を感じなかったろうか。  以前話した通り、この世界でのインターネットにあたる(ロープ)は主に帝都内に張り巡らされ、逆に言えば周辺の街まではまだ行き届いていない。  では、そんなロープが届かない筈の辺境の村に住んでいる主人公トールの動向を、A Iのアネモネはどうやって知りえたのか。  それを実現する為、まずアネモネはゼロが二つ付く数量の、大量の機械化人形(ゴーレム)を買い漁った。  まずこの時点で金の出所やどうやって支払ったのか等々ツッコミどころ満載だけれども、更にアネモネはこのゴーレムを帝都からトールの住む辺境の村まで等間隔に、それも容易に目立たないような場所に配置した。  そしてゴーレムを無線の中継点としてロープを繋ぎ、主人公トールを(ツブサ)に観察していたという訳だ。  うん、ヤンデレストーカーここに極まれり。  その手段を選ばない行動力は一周回って、感動すら覚えた。  まあそんな七面倒臭い事をしなくても建国祭の様子なら、警備ゴーレムが彼処此処(あっちこっち)に配置されているので私でも観察が容易だ。  さてヴァーリとトールは今何処に……
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