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「ああ、アネモネのトールが帝都で迷子になってる。
助けた方がいいかな?」
色々ツッコミたいんだけれどアネモネ、まず主人公はお前の物じゃないぞヤンデレAI?
あと絶対助けるな、ヴァーリとの貴重な出会いフラグを折るな。
「あっ、誰だアネモネのトールに馴れ馴れしく声をかけるあの銀髪は」
だからお前のじゃ(略)。
あとその銀髪の美少年こそがお前の機体の未来の搭乗者になる私の推しヴァーリだよ、良く顔を覚えとけ。
「アレが帝国第三皇子?……何か思ってたのと違う」
いや知らんがな。
というか銀髪赤目に浅黒い肌のヴァーリ少年はウサギみたいですごく可愛いじゃないか何が不満か。最推しにケチをつけるとか、私に喧嘩売ってる?
……ってもう、折角の外伝小説のいい場面に全然集中出来ないんだけど。
いいから黙んでろ!
「……」
ふう、ようやく静かになったか。
「……なら、俺が帝都を案内しよう」
ほら、ヤンデレAIのせいでヴァーリの肝心な台詞を聞きそびれたぁ!
二人が出会ってから今の台詞までの間も、いくつか会話してた筈なのに。
「音声ならアネモネが記録してるから後で聞けるぞ?」
それはグッジョブ!
だけれどもリアルタイムで聞きたかったんだよう。
かくしてヴァーリに手を惹かれて、トールは建国祭で賑わう帝都を案内された。
ああ、少年の姿の最推しが尊いんじゃあ。
「その感情はよく分からないが、アネモネのトールは今日も興味深い」
いやアネモネ、言い方違うだけでほぼ同じ事言ってるからね?
そもそもお前のじゃ(三回目)。
「ん?トールの母親が二人を見つけたようだぞ」
そうみたいだね。
そもそも今回の外伝は母に連れられて帝都に来たトールが、迷子になった事からヴァーリと出会い仲良くなる内容だ。
という事は、そろそろ終わりかあ。
あっトールの母親がヴァーリに深々と謝罪をしている。
こっちは第三皇子である彼の正体を知ってるもんなあ。
「良い良い、今日は十分楽しめたし堅苦しいのは抜きだ」
ヴァーリはそう言って母親を制した。
「えっ、ヴァーリ……様って、ひょっとして偉い人だったりする……のですか?」
トールも慌てて、慣れない敬語を使おうとするが。
「だから堅苦しいのは抜きと言ってるだろう。今後も二人の時は、無二の友として接してくれ」
「分かりま……わかった、ヴァーリ」
第三皇子の言葉に、そう言ってトールは笑ったのだった。
「しかし身分の違いとは実に面倒なものだな」
と口を開くアネモネ。
そうだね、そこは全面的に同意する。
というか、あそこで迷子のトールを助けないで正解だったでしょ?
「まあ、そこそこ興味深い物が見れたと思う」
何よその言い方、素直じゃないなあ。
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