第4話:新しい生活の中で、僕たちは揺れ動く(その4)(完結)

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第4話:新しい生活の中で、僕たちは揺れ動く(その4)(完結)

※今回は女性上位ではあるものの、女攻め要素はないです。 ※今回は男性から女性への挿入シーン有なので、苦手な方はお気を付けください。 **** ユキヤより少し遅れて寝室に来たすみれは、服を脱ぐ。 そしてベッドに仰向けになる。 「ねぇ、ユキヤ、電気消して」 すみれが甘えたような声でお願いする。 「ごめん、暗くすると見えにくくなるから、このままでもいいかな?」 ユキヤは申し訳なさそうに言う。 「ん、別に構わないけど」 すみれは少し不満げな表情を浮かべる。 「じゃあ、これ付けておいて」「え?!」そう言ってす みれから首輪を渡された。 「・・・どうして?」「気分の問題・・・かな?」「気分って・・・」 ユキヤはちょっと苦笑いする。 「それに、もしも君が暴走したりしたら、私がリード引っ張って止める。」 すみれはちょっとだけ真剣な目をする。 「・・・なるべくそうならないようにします・・・」 ユキヤはそう言って首輪をつけると、リードをすみれに手渡した。 「えっと、それで、これからどうすれば良いの?」 ユキヤは少し不安そうに尋ねる。 「ベッドの横にある引き出しの2段目に 手袋と指用のスキンが入ってるから・・・」 すみれは恥ずかしさで顔を赤くしながら答える。 「これだね」(俺用のかな・・・?) ユキヤは言われたとおりのものを取り出すと、それを両手にはめる。 「あと、ローションは枕元に置いてあるから、それも使って」 すみれは顔を背けたまま答える。 「了解」 ユキヤは言われるままに準備を進める。 ユキヤが希望した事・・・それはすみれとのアナルセックスだった。 以前から興味は少しあったが、自分が調教されるようになって以降、 この感覚を彼女と共有したいという願望が密かに生まれていた。 それを今、思い切ってすみれにお願いしたという次第である。 (・・・我ながら変態臭いとは思うが) とはいえど、いつぞやはちょっと乱暴に扱ってしまい、 すみれを痛がらせてしまったため、 今回はかつてないほど慎重に動いていた。 「・・・ユキヤ、本当に大丈夫なの?そんなに緊張しなくても 私はユキヤの彼女なんだから、もっと気楽にしてくれても良いのに」 すみれはユキヤのことが心配だった。 「いや、俺だってすみれのこと大切にしたいんだ。 だからすみれの痛がることはしたくないんだよ」 ユキヤは優しい口調で語りかける。 「ユキヤ・・・」 すみれは少し感動した様子でユキヤを見る。 「じゃあ・・・はじめるよ」 ユキヤはすみれのアナルに優しくキスをする。「ひゃっ!」 すみれは突然のことに驚きの声をあげる。 そのままゆっくりと舌を這わせると、すみれの身体が小さく震える。 しばらく舐め続ける。 「あっ・・・ああ・・・んぅ・・・」 すみれの口から甘い吐息が漏れる。 今度は穴の中にまで入れていく。 「くふ・・・あん・・・はぁ・・・」 すみれは身を捩りながらも感じているようだ。 一旦口を離す。 「ねえ、ユキヤ、そこから、ゆっくりほぐしてみて・・・」 すみれは上目遣いでユキヤにお願いする。 「うん、わかった」 ユキヤは手袋をした指にローションを垂らすと、すみれのアナルの周りを ゆっくりとマッサージしていった。 (・・・お、思ったよりやることが多いな) ユキヤは内心焦っていた。 まずはアナル周辺から解していく。 暫くすると少しづつだが柔らかくなり始める・・・ (こいつは・・・いつも俺にこんな風に・・・) ユキヤはすみれが自分に結構手間をかけていたことに 今更ながら感心していた。 次は中へと入っていく。 「力・・・抜いて・・・」 「あ・・・はあ・・・んう・・・」 すみれは気持ちよさそうな声を出す。 少しずつ奥へ進めていき、とうとう指先を全部入れることが出来た。 「はぁ、はぁ、はぁ」(まず1本・・・・) ユキヤは緊張しながらも次の段階へと移る。 ゆっくりと抜き差しを繰り返す。 「んっ、んんっうぐっ・・・!」 徐々に動きを速めていく。 「んっ!んっ!!んっ!!!」 すみれは声を押し殺しながら感じている。 「大丈夫?痛くない?」「ん、だ、だいじょうぶ・・・」 すみれの呼吸は荒くなっている。 「もうちょっと早く動かすよ」(こんなに・・・きつかったんだ) 「ん、ゆ、ゆっくりね」 ユキヤは指の動きをさらに早めた。 「あ、ちょ、ちょ、ま、まって、なんか、へん、かも」 すみれは戸惑ったような声で訴える。 「ど、どうしたの!?」 ユキヤは慌てて手を止める。 「えっと、その、なんというか、やだ、ちょっと変な気分になってきた・・・ ・・・も、もしかしたら私、ユキヤに後ろの穴を弄られて・・・ 興奮してきた・・・のかな・・・」 すみれは顔を真っ赤にして答えた。 (す、すみれがこんな事・・・言い出すなんて!!) これを聞いてユキヤは心臓が爆発しそうなほど興奮する。 「そ、そうなのか、お、俺もちょっと興奮してきたよ・・・」 本当はちょっとどころではないが 出来る限り平静を装いつつ、恥ずかしげに答える。 「・・・に、2本にしてみていい・・・」 「う、うん、良いけど、さっきよりも優しくして・・・」 ユキヤは言われた通りにゆっくりと指を入れていった。 「うっ、んっ、んっ」 すみれは苦しそうだ。 「ごめん、大丈夫?やっぱり無理しなくても・・・」 そう言って離れようよするユキヤをすみれがリードを引っ張って止める。 「い、いや、続けて・・・やめない・・・でぇ」 「わ、分かった」 (う、下手するとこっちの指がちぎれそう・・・) ユキヤは慎重に動かし始めた。 「くぅ、くふぅ、ふぅ・・・んん」 すみれは歯を食い縛って耐えている。 (こんなに狭くて・・・きつかったんだ!)改めて狭さを実感していた。 「大丈夫?もう少し速くするよ」「・・・うん、大丈夫」 ユキヤはさらにペースを上げる。 「あっ、あっ、あっ、あっあぅん!」 すみれは今までに無い感覚に戸惑いながらも感じていた。 ユキヤはすみれのアナルに挿入している指を激しく出し入れし始めた。 「ああぁぁぁぁぁ!!!だめぇぇぇぇー」 すみれは悲鳴のような喘ぎ声をあげてしまう。 「こっちは・・・どう?」 ユキヤはすみれのアナルに指を出し入れしながら、 もう片方の手でクリトリスを刺激する。 「あ、あ、あ、あ、あっ、あ、あん、あっ、あ、あぁ」 すみれは声にならない声をあげて悶える (私・・・こんなに感じてるんだ・・・) 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」 すみれの息づかいがどんどん荒くなっていく。 「ユキちゃん・・・もっとぉ・・・」 すみれはユキヤに更なる刺激を求める。 「うん、わかった」 すみれが悶える様子を見て、ユキヤの心拍数は跳ね上がる。 (女の子には・・・前立腺はないのに、ここまで感じられるんだ) ユキヤはすみれの性感帯を探りながら責めていく。 「んんん~」 すみれの反応を見ながら、少しずつ指を奥へと進める。 「ねぇ・・・後ろの穴、気持ちいいの?」「う、うん・・・」 「お尻の穴に指を入れられると・・・どんな感じなの?」 「な、なんだろ・・・なんか、不思議な感じがする」 「じゃあ・・・こっちは?」 ユキヤは指を少し曲げてアナルを刺激した。 「あんっ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あっあ、あ、あ、あ、あ」 「気持ち・・・いいの?」 「う、うん、気持ちいいよ・・・ユキちゃんもこんな風に感じてたの?」 「わからない・・・男と女だと・・・感じ方違うかもしれないし・・・」 すみれからこんな言葉が聞けただけでも物凄くうれしかった。 「そうなんだ・・・でも、ユキちゃんも今、 同じ様な気分になってるんでしょ?」 「ま、まぁね」(締め付けてくるけど・・・ちょっと暖かい・・・) ユキヤは指を更に深く入れる。 「ううっ」 「ここが良いの?」 「う、うん、そこ、すごく良いよ・・・」 「そっか、ここはどう?」 ユキヤは指を小刻みに振動させた。 「あっ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」 すみれは身体を仰け反らせて反応した。 「すごい!そんなに感じるんだ!」 ユキヤは指を更に強く動かす。 「いいよ・・・入れて・・・も・・・」 息も絶え絶えのすみれの口から声が漏れる。 「え?!大丈夫なの?!」 確かにすみれの中には挿れてみたい・・・ でもこんな狭いところに無理に入れて、大丈夫なのか? ユキヤの中でそんな思考が巡っていた。 「だいじょうぶだよ・・・早くぅ・・・もう我慢できないよぉ」 その言葉を聞いてユキヤも覚悟を決めた。 「わかった・・・!」 ユキヤは自分のペニスにスキンをかぶせ、ローションを塗りたくる (これで少しでも痛くないはず・・・) 「い・・・入れるよ」「う、うん・・・」 ユキヤは顔を紅潮させ、ゆっくりと自分のモノを押し込んでいく (キツイ!うっ・・・) 「ぐぅぅぅ・・・きつい・・・」「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」 「す、すみれ、全部・・・入ったよ」 「はぁ、はぁ、はぁ、ほんとう・・・?」 「うん、本当」 「嬉しい・・・」 すみれは涙を流した。 (俺の時だって相当段階踏んで時間かけてあそこまで行ったのに・・・) こんな早い段階でここまで来てしまったら・・・相当きついはずだ。 ユキヤはそう思って出来るだけ負担を掛けないようにゆっくり動く。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」 すみれは痛みに耐えるように目を閉じて息を整えている。 (うわぁ、き、きついっ!) ユキヤはすみれの中の感触に驚いていた。 「ホントに・・・大丈夫か?痛かったら止めるけど」 「はぁ、はぁ、はぁ、ううん、平気だから続けて」 「わかった」 ユキヤはゆっくりと腰を動かす。 「う、うう・・・あぁぁ・・・あん」 「ごめん、やっぱり辛いよね?」 「ううん、違うの。気持ちよくって声が出ちゃったの」 「え・・・そうなの!?」 「うん、なんだろ、凄く幸せな感じ・・・」 「すみれの中、あったかくて気持ちいいよ!」 「ユキちゃんのも大きくてぇ、太くて硬くて・・・好きぃ!」 「なぁ!もっと激しく動いてもいい?」 「うん、でも、ちょっとお手柔らかにね・・・」流石に苦しいようだ。 「・・・わかった!」 ユキヤはすみれの身体を抱きしめてキスをする。 「んんっ!!」 ユキヤはすみれの唇に舌を割り込ませる。 「んっ!」 すみれもユキヤの口の中に舌を侵入させる。 ユキヤはすみれの舌を絡めとるように舐め回す。 「あ・・・あぁ・・・」 すみれはユキヤの背中に腕を回して抱きついた。 「すみれ、好きだよ」 「私も大好き」 「すみれ、すみれ、すみれ!」 「ユキちゃん、ユキちゃん、ユキちゃん・・・!!」 二人はお互いの名前を呼びながら愛し合った。 そして絶頂を迎えた。 「・・・俺、そろそろ・・・」「うん、いいよ、出して」 「あっうぅぅぅ・・・んん・・・」スキンの中に精液が放たれた。 (なんだろう・・・この切ない感覚・・・) 前でするものとはまた違う感覚に戸惑う。 「はぁ、はぁ、ふぅ・・・」 ユキヤは自分のモノからスキンを外し、大きく息を吐く。 「ありがとう、ユキちゃん」 「こちらこそ」「大丈夫・・・痛くない?」 「うん・・・まだちょっと痛いけど、これぐらいなら大丈夫だよ」 すみれは笑って見せる。 「本当に?」「大丈夫だってば」 「それじゃあ」「うん」 すみれとユキヤは身体を離す。 (ああ・・・とうとうやっちゃった) すみれは内心ではドキドキしているものの、 不思議と罪悪感のようなものは無かった。 (ユキちゃんの希望だったけど・・・ 私も心のどこかで望んでたのかな・・・) ユキヤに抱かれてる間は幸福感に包まれていた。 それは間違いなかった。 「すみれ、ごめん・・・」 「何で謝るの?私がしたいって言ったんだから、むしろこっちが謝りたいよ」 「そうかな?でも言い出したのは俺だし・・・」 「私はユキちゃんが好き。ユキちゃんは?」 「もちろん、すみれのことを愛してるよ」 「えへへ、嬉しい」 「でもさ、初めてでちゃんと挿れられたあたり、 才能あるんじゃないか?」 「・・・何のよ?」 「後ろで感じる方の」 「・・・ええ、なんか嫌だなぁ・・・」 なかなか上手くいかないのももどかしいが、あまりにすんなり行けたのも 釈然としないらしい。 「いや、お前の指導があったから、すんなり行けた線もあるぞ。」 「・・・それ、褒めてるつもり?」「・・・ごめん」 「やっぱ個人差なのかなぁ・・・」 「・・・その前に俺で色々やってたから、どうすれば痛くないとか、 色々分かってたんじゃないか?スキンとローションだって、 いつもお前がやってるの見てたからだし。」 実際のところ、今回は普段すみれがやっている事を 真似てみたところは多かった。 「そういう事もあるのかなぁ・・・」すみれは首をかしげる。 「少なくとも痛くないようにしようとする際には、 俺はいつものお前を参考にしたよ」 そういってユキヤはすみれを抱きしめた。 「・・・今度はユキちゃんがされたくなってきちゃった?」 照れ臭くなってきたすみれが露骨に話題を変えてきた。 「う・・・いやいい、今日はこれで終わり!」 「わかった」 「もう寝ようか」「うん」 二人はベッドに入る。 *** 翌朝。 ぐちゃぐちゃに潰れた豆腐の残骸が入った味噌汁が朝の食卓にのぼる。 「うわ、ホントに使ったのかよ・・・」 「うん、別に傷んでたりするわけじゃないし。もったいないし。」 呆れた顔をするユキヤをよそに平然とすみれは言ってのけた。 「それに、君が顔面でつぶしたんだから、責任もって食べなさい!」 「へいへい」 ユキヤはしぶしぶといった感じで箸を手に取る。 「いただきます」「はい、召し上がれ」 (まぁ、この豆腐のお陰でユキヤがユキヤに戻ったんだから、 なおさら食べて供養しないとなんだけどね・・・。)「どう?おいしい?」 「うん、うまいよ・・・目を瞑れば」「良かった」 「それにしても・・・」「何?」 すみれの問いにユキヤは焼き魚を口に運びながら返す。 「たまには男の子であることを尊重しようと思ったら、 まさか後ろの穴でしたいとか言い出すと思わなかったよ・・・」 「・・・えっと、それはごめん」 「まあ、ユキちゃんの頼みだから、別に良いけどさ」 「・・・我ながらかなり変態臭いとは思ってる」 ユキヤは真っ赤になりうつむいた。「ふっ、可愛いな~ユキちゃんは」 すみれはクスリと笑う。 「うるせぇ」 「でもさ、ユキちゃん。どうして急にあんなことしようって思ったの?」 「え?あー・・・」 ユキヤは少し考えて淡々と話し始めた。 「実はさ・・・お前にされるようになってから、 女の子が後ろに入れられる感覚って どういう感覚なのかずっと気になってて・・・」 淡々と・・・してるはずがどんどん顔が真っ赤になっていく。 「それで、昨日、あんなふうに聞かれたから、チャンスかなって思って」 「・・・そうだったんだ」 「一度だけやってみて、お前が気持ちよくなかったらもういいと思ってた。」 「・・・・・・・・・・」 すみれの顔もだんだん紅潮してくる。 それを見たユキヤは照れ隠しをするかのように続けた。 「でも途中から、だんだん興奮してきて・・・止まらなかった」 すみれは顔を赤くしながらも真剣な眼差しでユキヤの告白を聞いている。 「なんか、自分でも驚くくらい、変な気分で、頭がおかしくなりそうなのに、 それがすごく心地良くて、もっとこうしてしたいって思ったりして・・・」 と、ここでユキヤはハッとして口を噤む。 自分の口走っていることが、たまらなく恥ずかしい事だと気付いたからだ。 「あ、いや、その・・・」 「ふぅん・・・」 すみれはニマニマしながらユキヤを見つめている。 「つまり君は私との後ろでのHで久々に 男の子としての快感を味わっちゃったってわけだね?」 「・・・そういう言い方すんなよ」 「だって事実でしょ?」 「うぐっ」 ユキヤは反論できず黙ってしまった。 「・・・でもさ、ユキちゃん」 「なんだよ」 「もし、私が君を女の子にしてあげたいって言ったら、なれる?」 「はぁ!?そんなの無理に決まってるだろうが」 ユキヤは即答した。 「そうだよね」 すみれは笑顔で答えた。 (でもこうしてたまに男の子って事を思い出させないと、 また戻ってこなくなりそうだしなぁ) 「まぁ、私はどっちにユキヤも好きだけどね」「な、何をいきなり・・・」 「本音だよ、ほら早く食べちゃいなよ」 「お、おう」 ユキヤは少し慌てながら味噌汁を飲み干した。 「ごちそうさま」「はい、お粗末様」 朝食を食べ終えた二人は食器を片づけると、 いつものように一緒に大学へ向かった。 *** 「・・・ぬ、もう終わってしまったとは残念です。」 大学の研究室では蘇芳が多少残念そうな面持ちで、 浅葱からの報告を聞いていた。 「普通ならあのままメス堕ちコースなんっスけどねぇ・・・」 浅葱はため息混じりに呟く。 「まだ色々と危うい茶木くんのメンタルを、 白石さんの強固なメンタルが支えて、 更に茶木くんの存在が白石さんを支えて・・・ お互いのバランスをとっている ・・・という事でしょうか?確かにこれはこれでなかなかに 面白い結果ですね」 「ま、確かに意外で面白かったっスね」 「それにしても、茶木くんは本当に興味深い存在ですよ。 ・・・しかし豆腐の角とは・・・フッ、クックック・・・!」 蘇芳は堪えきれず笑い声を上げてしまう。 「教授、なーに笑ってるんっスか?」 浅葱は呆れた様子である。 「いえ、何でもありません。ただあまりにも・・・」 蘇芳はそこで言葉を止め、ニヤリとした笑みを浮かべる。 「あまりに滑稽で愉快だったもので」 「はぁ、そうっスか・・・」 浅葱はため息をついた。 「しかしさっちゃんがこの先またメス男子になっちゃうっスかね?」 「そのあたりは、茶木くんの根底に『男でありたい』 という気持ちがある限り大丈夫でしょう。」 そう言うと蘇芳は、コーヒーカップに口をつけた。 「ま、何にせよ、これからもあの二人の動向を見守りましょう」 蘇芳は不敵な笑みを浮かべた。「えぇ、そうしましょう。」 浅葱もニコッとして同意した。 「さ、それじゃ仕事してくださいね。サボった分の仕事は たっぷりあるんですから」 「ふぅ、わかってますよ。私もそろそろ仕事をしないと・・・」 「調整任せたネギの奴が死んでるっスよ・・・」 浅葱はやれやれといった表情になる。 *** 大学では・・・。 先を歩くすみれの背中を見ながら、ユキヤはこの前聞けなかったことを思い出す。 (すみれは俺を女の子にしたいの?) それはずっとユキヤの中にあった疑問であった。 今まで聞くタイミングがなかったのだ。 (俺は女の子になりたいわけじゃないんだよな・・・) ただすみれに女の子みたいに扱われているだけ。 女の子として扱われて喜んでいる自分がいる。 ユキヤはそんな自分に戸惑っていた。そしてそれが嫌ではなかったことに。 (でも、それでも俺はすみれがいる限り、男でいたい・・・ 男としてお前を好きでいたい) ユキヤは自分の中の気持ちを確かめるように心の中で思った。 おわり
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