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小4 転校
「東京に引っ越すことになったよ」
「……えっ?」
夕飯を食べていた時、突然父にこう告げられた3月の下旬。
新潟に住んでいた僕は都会に憧れを持っていたので、「東京」という言葉を聞いて目を輝かせた。
「すごっ東京! 都会?都会??」
「うん、都会だよ。5月くらいに引っ越すことになると思う」
「え〜楽しみ!」
僕は思わず足をばたつかせた。
「むゆ、寂しくない?新潟のお友達とバイバイすることになるよ?」
母が心配そうにこう尋ねてくれたが、まだ8歳だった僕はそんな大きなことは特に考えず、
「ううん!楽しみ!」
と、笑顔で大きく頷いた。
その日の夜は東京のことで頭がいっぱいだった。
(新しい学校で友達をたくさん作る! 色んな場所にお出かけする! もっとお洒落になる!)
そんなことを毎日考えていた。
5月がとても待ち遠しかった。
でも、僕はその時知らなかった。
東京の厳しさを知らなかった───。
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