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Recollection1
私と司はずっと一緒だった。家も近いし、幼稚園から中学校まで同じだった。
幼稚園の頃は、司がずっと私の後ろをついてきていた。司は同い年の子たちに比べたら背の小さい方だったし、気も強くないからよくいじめられていて、その度に私が司を守っていた。私は背が高い方だったし、司たちよりも一つ上だったから、いじめっ子を追い払うのは簡単だった。
『あかりちゃん、いつもたすけてくれてありがとう』
そう言って私に向ける笑顔は本当に眩しくて、その笑顔を見るために司を守っていたんだろうなと思う。
小学校に上がっても、私と司は相変わらず仲良しだった。やっぱり私の方が一つ上だから、司を助けてあげなくちゃという使命感に駆られていたのもあったのだろう。
そして、学年が上がるにつれ、私の司への気持ちは変化していく。今までは司のことを弟のように思っていたのに、それがいつの間にか『恋』に変わっていたのだ。
司の声を聞くと、笑顔を見ると、嬉しい気持ちの奥で胸がキュッとなる。
最初は、これが恋なんだとわかってとても幸せだった。司と一緒にいるだけで、司のことを考えるだけで幸せだった。
しかし、その幸せは私の中でいつまでも続かなかった。中学校に上がると、だんだん司に怒りや嫉妬をおぼえるようになった。
司は運動神経が良かった。運動会ではどの種目でも活躍していた。でも、私は運動なんて得意じゃない。
司は誰とでも仲良くなれた。司の周りにはいつも人が集まっていた。でも、私は人に話しかけるのは得意じゃない。
私は司より一つ上だし、きっと同じ学年に可愛い子なんていっぱいいるんだろうし、私なんか相手にされないんだろうと思うと、なぜだか無性に腹が立った。
司を思えば思うほど、司との差に打ちのめされて、自分が惨めになってきて、この負の感情を司に向けるしか出来なくなった。
司と何とか離れようと思って、高校は県内で一番頭のいい学校に入った。私の取り柄といえば勉強しかなかったから。ここなら家から遠いし、司が入ってくることもないだろうと思った。
なのに、一年後、司は当たり前のように同じ高校に入ってきた。どうしてと聞くと、
「明凛と同じ高校に入りたかったから」
私のことなんて別に好きじゃないくせに、ただの友達としか思ってないくせに、なんでそんな言葉が出てくるのか理解できなかった。
それに、唯一勉強でなら司に勝てると思っていたのに、それすらも否定されて、私の心はズタズタだった。
この感情は一体何なのか。わからないけれど、ひとつ言えるのは、それでも私は司に恋をしているということ。
こんなにも司が憎くてたまらないのに、それでも私は司のことが好きなんだ。
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