Prologue

1/1
前へ
/3ページ
次へ

Prologue

司を初めて見たのは四歳のときだった。 年中に上がってすぐの頃。家の前で幼稚園のバスを待っていたら、隣の家で、母親に抱きついて泣いている男の子がいた。それが司。 司は私よりもひとつ下の年少で、きっとその日は初めてバスで登園する日だったのだろう。 バスの先生に抱えられて司はバスに乗る。その後に続いて私もバスに乗った。 バスの席は司と隣だった。座ってもまだ司は泣いていたから、私は 「だいじょうぶだよ、あかりがいるから。ようちえんたのしいよ」 と話しかけた。 自分の方が上というのが嬉しくて、少しお姉さんぶってみた。 そうしたら、司は何も言わず、私の手をぎゅっと握ってきた。私の手よりも小さくて、可愛くて、私も何も言わずにぎゅっと握り返した。 幼稚園のときのことなんてあまり覚えてないけれど、そのことは今でも鮮明に覚えている。 今思えば、あの時から、私はもう恋をしていたのかもしれない。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加