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はあ、はあと降ってくる想空の吐息が不愉快に湿っぽくて、比奈の背中に走る虫唾。
気持ちの悪い棒切れの出し入れにしか感じられぬセックスに、涙がこぼれた。
「気持ち、悪いっ……」
思ったことを、比奈はそのまま呟いた。
その瞬間、想空の動きはぴたりと止まった。
「気持ち悪い、気持ちよくない……想空なんか、大っ嫌い……!」
両手で顔を覆った比奈の指の隙間から、きらりと光る雫が見えた。
もうだめだ、と想空は思った。
比奈を精神的にも肉体的にも傷付ける俺なんか、どこかに消えた方がいいと。
怒りに任せて比奈の下半身に押し込んだものをそっと引き抜き、彼はソファーにへたり込む。
乱暴に抱かれて涙する比奈を目に、自分がレイプ犯に思えた。
「俺、この家出てくわ……」
それは、以前から考えていたこと。
「比奈を壊す前に、俺出てく……クリスマスまで、自分が正気でいられる自信がない……」
比奈とは幸せになれやしない。
抗えない運命に、想空の心はボロボロだった。
乱暴してごめん、と呟き、比奈の身体にかけるタオルケット。顔を覆っている彼女とは目も合わないが、それでいいと想空は思った。
何故ならば、合わせる顔なんてどこにもないから。
「ばいばい、比奈。まじで俺、比奈のこと大好きだったよ……」
そして想空は、その日のうちに荷物をまとめて出て行った。
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