目覚めたら、裸の男にキスされた

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「あ、起きた」  比奈(ひな)がベッドの上で目覚めた時、隣で言われたそんなこと。 「おはよう比奈。そろそろ会社へ行く時間だよ」  爽やかで、澄んでいて。聞き心地の良い声のトーン。  顔を傾け誰だと確かめたいけれど、頭痛がそれの邪魔をした。 (アイタタタ…あったまいたーい…昨日飲み過ぎちゃたせいかなあ……)  二日酔い。  脳天貫くようなこの痛みを、比奈はそう判別した。けれど違うかもしれないとも思ったのは、飲酒をした記憶がなかったから。 (あれ?わたしって昨日、なにしてたっけ?)  うーんと考えるが、全く思い出せはしない昨日のこと。ぐるぐる思考が駆け巡り、ついには自分の名前すら言えないことに気付いた時── 「おい比奈っ。おはようってば」  爽やかボイスと共にされたキス。  不意打ちのことで、比奈は驚く。 (ななな、なにすんのこの人!なんでいきなりキスなんか!!)  隣から、仰向け状態の比奈の真上に移動してきたその人物は、見知らぬ男の人だった。  きりっとした眉に奥二重、筋の通った鼻に見惚れたのは束の間で、比奈は端正な顔立ちの下に見えた光景に、更に驚く羽目になる。 (きゃー!!はははは!は、裸なんですけどこの人〜!!)
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