藤倉君が好きとか……そんなんじゃない!

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藤倉君が好きとか……そんなんじゃない!

 修学旅行の、初日。  思い出すたびに、涙が出そうになる。    でも、私が泣いていい訳がない。  傷つけたのは私で。  傷ついたのは藤倉君で。  あの時の、藤倉君の苦笑いを思い出すたび、胸が張りさけそうになる。  私は。  自分の片想いを、自分で(こわ)してしまった。 ●  あの日。    夜ご飯前に部屋で誰かが修学旅行中に告白するって言って、恋バナが始まった。 「えー! 桜、とうとう告白するんだ!」 「おー! 応援してよね!」  きゃあきゃあと盛り上がる中、私に話が振られた。 「(はるか)ちゃんも藤倉に告白しちゃえば?」 「……えっ」  ボンヤリとジャージに着替えていた私。  誰にも言ってなかったはずの片想いと、好きな男の子の名前が出てきたことに、息が詰まった。 「えー! 及川(おいかわ)さん藤倉君好きなんだ!」 「にぶー! 遥ちゃん、藤倉のことよく見てるし、藤倉以外の他の男子と話あんまりしないじゃん」 「えっ……えっ?」  私は、内緒にしていた片想いがみんなにバレてしまっている事に動揺(どうよう)して。 「ダブルデートで盛り上げるのもアリじゃない?」 「ね、ね! 藤倉のどこが好きなの?」  みんなから問いつめられた私はあの時。  思ってもいないことを叫んでしまった。 「わ、私! 藤倉君が好きとか……そんなんじゃない!」  私が、そう言った瞬間。  部屋が、しーん、となって。    そして。  バターン!!  どたたたたたっ!  フスマが倒れて、男子たちが部屋になだれこんできた。 「いってー!」 「うわー?!」 「重いっつの! 早くどけ!」  突然の事に、男子と私たちの悲鳴が重なった。 「きゃー!」 「何やってんのよアンタたち!!」 「サイテー!!」 ●  悲鳴や叫び、騒がしい物音の中。  私は騒ぎどころではなく、立ちつくしていた。    倒れ込む男子たちの後ろに。  私と同じように立ちつくす、藤倉君がいたから。
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