Sweet Pain : 圭ちゃんの十字架

2/8
前へ
/8ページ
次へ
 そのサークルでは個別にやり取りをしたい人はリーダーを通して封書等を送り、文通等の付き合いを始めることが許されていた。  それで彼女から、直接手紙のやり取りをしてみたい、という内容の封書をもらった。  そのころの僕は遅れてやって来た反抗期のさなかにあって、サークルの冊子にいかにも厨二病と揶揄されそうな、激烈なエッセイや詩を載せていた。  それが彼女にいたく響いたらしく、僕と直接言葉を交わしたいというような様子だった。  そのとき手にした住所と宛名の書かれたメモで、彼女の名前が「圭子」であると知り、以降手紙の中では彼女を「圭ちゃん」と呼んだ。 (ちなみにサークルでは皆、ペンネームで名乗っていたが、僕は本心を赤裸々に書き綴る信条だったので、下の名前を名乗っていた。  一方の彼女は「夢遊民」というペンネームだった。だいぶのちに知ったが、劇団名がその由来だった)
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加