5人が本棚に入れています
本棚に追加
この小山卓治もロックを標榜していたアーティストである。
彼はソロのシンガーソングライターで、これものちに知ったが、僕を完全にロックの世界に連れ込んだ尾崎豊と同じレコード会社の同じ須藤晃プロデューサーでつながりがあり、さらにこの二人は面識もあったという。
彼の作品は、痛いくらい人間の本性に鋭く迫る詞と、孤独ゆえの愛のようなものを描く詞が真骨頂だった。
それをクールに歌い上げる声が、詞と相まって孤独に臆せず堂々と生き抜く覚悟に満ちていた。
それは、疎外感を強くしやすい僕のとげとげしい胸の内側から癒やす声でもあった。
彼の歌声は、あれから倍近く歳を重ねた僕だが、この身に染みついた寂しささえも励ますように包み込む優しさをいまだに湛えている。
それを僕に教えてくれた彼女は、数十通もの手紙のやり取りのあと、知り合ってたったの三年で僕を去っていった。
最初のコメントを投稿しよう!