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僕も彼女も互いのことを親友と見なしていたと思う。
決して恋愛感情に発展することはなかった。
恋することの多かった僕のことだから、その可能性くらいは感じていたが、今から思えば彼女は僕に一切「女」を見せなかった気がする。
純粋な魂の触れ合いで、だから僕は踏み込めなかったのだろう。
一度僕が電話で話そうと持ち掛けたが、彼女は「耳が悪いから電話で話せないんだ。ごめん」という返事を寄越した。
かつては電話魔といわれるくらい電話好きだったらしいが、病か何かで音楽もフルボリュームにしないと実はきこえないのだと告白した。
結局僕らの関係を端的にいえば、ひたすらに互いの青臭い人生論を戦わせる間柄だった。
そして若さゆえ、互いに分かり合えないことが出てくると、その失望を隠せなかった。
もしかしたら、そうやってぴったり心で寄り添っていたはずの僕らは、少しずつ距離ができてきたのかもしれない。
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