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僕は、だんだん彼女の悩みが理解できなくなってきていた。
神の話をし出したからである。
当時の僕は無宗教で、宗教にたいして寛容ではなかった。
今でこそ、自分の思考や生き方の中に溶け込んだ宗教的な発想に気づくことが時々あるし、試しに取り込んでみることさえあるが、当時は「神」に生理的な嫌悪感を抱いていた。
それが彼女にしたら決定的だったのかもしれない。
彼女はこの行き詰まりを自力で乗り越えようとしていたが、あきらめたらしい。
父から影響受けてかつて信じていたキリスト教の道に戻ることにしたという。
僕にそうしたため寄越してくれたが、それが彼女からの最後の手紙となった。
(了)
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