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そのウェイターが離れると。 「十和子、けっこう飲んでる? 今夜はどうしたの?」 「どうしたの?って?」 既に、何杯目か分からない。 中村春馬を待ってる間、この店でずっと飲んでいた。 「俺と会うから緊張して飲んでるってより、自棄になって飲んでるように見える。 悩んでいるのは仕事?プライベート?」 こうやって昔も私が落ち込んでいるとすぐに気付いてくれた。 中村春馬が新人の私の教育係だったのもあり、仕事の事をよく相談しているうちにこの人と仲良くなったんだったな。 「悩んでいるのは、プライベート」 「真田の事?」 「そう。浮気されたみたいで…」 今朝、聞こえて来た三浦さん達の会話では、今夜零斗と三浦さんは会って話し合うみたい。 昼休みに零斗から来たLINEのメッセージでは、今夜は高校の時の友達と飲みに行くから、って。 別に、私から零斗に今夜の予定を訊いたわけでもないのに、そうやって送られて来て。 楽しんで来てね、と、可愛いスタンプと一緒に返したけど。 いっそ、零斗と三浦さんの密会現場に乗り込んでやろうか、と思った。 どうせ、零斗の自宅で会ってるのだろうから。 「もしかして、派遣で来てる三浦って子?」 「なんで分かったの?」 「昨日、十和子帰った後、その三浦って子真田にべったりだったから」 そう聞いて、甘えるように零斗の横を歩く三浦さんの姿が頭に浮かぶ。 「けど、浮気相手迄同じ会社って面倒だな」 「本当に」 私が零斗と三浦さんの密会現場に踏み込まないのも、二人をまだ責め立てないのも、同じ会社だから。 事を大きくして、会社内で噂されたくない。 この先、零斗と話して別れる形になり、零斗と三浦さんが付き合い出したら、私は皆から見て零斗に捨てられて可哀想で目も当てられないだろうな。 向こうが悪い事しているのに、周囲の目が痛いのは私の方で納得行かない。
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