435人が本棚に入れています
本棚に追加
視線を感じたのか、中村春馬は私に目線を向けて来た。
今、目が合っている。
周りの人達と談笑しながらだけど、その目は私を嘲笑っているように見える。
そう思うのは、私とこの人が別れた理由にあるのかもしれない。
「でも、中村部長結婚してるんだよね。
聞いた話、大手の百貨店の専務の娘かなんかだっけ?
政略結婚的な?
ねえ、とわちゃん?」
零斗は相変わらず中村春馬の話題を辞めなくて、いい加減イライラとして来た。
もしかして、知ってるの?と訊いてしまいたくなる。
ふー、とため息を吐き、冷静になる。
「…中村部長の奥さん、綺麗な人だよ」
私はそう言って中村春馬の左手に視線を向けた。
遠くからでも見える、薬指の結婚指輪。
この人の結婚式当日、私は仮病を使い欠席をしたのだけど、
後日、同僚に見せられた写真で見た花嫁の姿。
悔しいとか恨み言が出ないくらい美人だった。
にしても、私は同じ部署だったから結婚式に招待されていたのだけど、
元彼女を結婚式に招待するなんて、この男はどんな神経してるのだろうか…。
最初のコメントを投稿しよう!