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視線を感じたのか、中村春馬は私に目線を向けて来た。 今、目が合っている。 周りの人達と談笑しながらだけど、その目は私を嘲笑っているように見える。 そう思うのは、私とこの人が別れた理由にあるのかもしれない。 「でも、中村部長結婚してるんだよね。 聞いた話、大手の百貨店の専務の娘かなんかだっけ? 政略結婚的な? ねえ、とわちゃん?」 零斗は相変わらず中村春馬の話題を辞めなくて、いい加減イライラとして来た。 もしかして、知ってるの?と訊いてしまいたくなる。 ふー、とため息を吐き、冷静になる。 「…中村部長の奥さん、綺麗な人だよ」 私はそう言って中村春馬の左手に視線を向けた。 遠くからでも見える、薬指の結婚指輪。 この人の結婚式当日、私は仮病を使い欠席をしたのだけど、 後日、同僚に見せられた写真で見た花嫁の姿。 悔しいとか恨み言が出ないくらい美人だった。 にしても、私は同じ部署だったから結婚式に招待されていたのだけど、 元彼女を結婚式に招待するなんて、この男はどんな神経してるのだろうか…。
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