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「もう私は怒ってませんよ? そりゃああの時は婚約者の事を含め、会長の孫だとか隠されてて、腹が立ってあなたと別れました。 そこからあなたが転勤する迄仕事以外では一切あなたの事を無視してましたけど。 でも、あれから5年も経って…。 今さらあなたから謝罪が欲しいなんて思ってませんよ?」 「俺は別に謝りに来たわけじゃない」 「では、今夜はどんなご用件で? もしかして、私が昔あなたと交際していた事を誰にも言わないように、再度口止めとかですか?」 「さっきから凄く他人行儀。 あれ程愛し合った仲なのに」 アハハと笑いながら、中村春馬はこちらへと歩いて私との距離をつめて来る。 その距離が近くなって私が後ろに下がろうとしたら、腕を掴まれて。 それに驚いてコンビニの袋を落としそうになった。 「今日十和子の顔見てたらさ、気持ちが再熱して。 俺達やり直さない?」 「え?中村部長は結婚されてますよね?」 「うん。特に妻と離婚する予定もないんだけどね」 「え、いや。私も現在付き合っている男性が居ますし。 そうじゃなくても不倫とかあり得ない」 「真田だろ?さっきの飲み会の時も十和子の隣に座って。 二人が仲良さそうですっごい妬けた」 「え…」 零斗との関係は隠していないので、こうやって知られて困る事はないのだけど。 今動揺しているのは、それを知ってて関係を迫って来るこの人に。
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