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「真田は二次会に行ったから、チャンスだと思って俺はこうやって十和子を待ち伏せてるんだけど」 そういえば、昔からこの人はこうやって積極的で。 私にグイグイと迫って来て、私はこの人を好きになって…。 いや、その前から私もこの人に惹かれていたけど。 「昔から十和子は可愛かったけど、さらに良い女になったよな。 どう?お互いパートナーに内緒で?」 もうこの人に気持ちなんてないと思っていたけど、こうやって迫られて胸が勝手にドキドキとしている。 数年振りに見る中村春馬の容姿は昔と変わらない。 線を引いたように高い鼻と涼しげな切れ長の目。 口角の上がった唇もそうだけど、笑うとうっすらとエクボが頬に出る。 今みたいに近くに居ると背が高いから見上げてしまう。 ただ、目線を下げると、中村春馬の左手の薬指の指輪が目に入り、私を咎めるようにキラキラと光っている。 「…昔も言ったけど、私はあなたの愛人になる気はないから!」 私は掴まれている腕を振り払い、この人の顔を睨み付ける。 その私の視線を受け、余裕たっぷりに口元が笑っている。 「そっか。気が変わったら連絡して。 携帯番号昔から変わってないから」 「そんなのとっくの昔に消してます!」 「ふーん。あ、今日、俺、うちの部のグループLINEに招待されたから。 LINEでいいよ」 「しない。絶対にあなたに連絡なんてしない!」 「そう。じゃああまり期待しないで待ってる」 昔から、こうやってこの人は自分勝手で。 付き合ってる時に喧嘩しても、こうやってはぐらかされてばかり。 「もう帰って」 「分かった。十和子おやすみ。 俺はまた十和子に会えて嬉しいから」 その言葉に、何か言い返してやりたいけど、喉が詰まったように言葉が出なくて。 私はこの人に二度と会いたくなかったはずなのに。 何も言わない私に、中村春馬は背を向けると国道の方へと歩いて行く。 それは駅とは逆で。 タクシーでも捕まえて帰るのだろう。 奥さんの元へと。
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