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翌日。
朝、就業前にトイレへと行き個室に入ってすぐに、誰かの会話が聞こえて来た。
『絶対、他の人に言わないでね』
すぐにその声の主が、営業事務として派遣で来てくれている三浦さんのものだと分かる。
女の子らしい可愛い声で、アイドルのあの子の声に似ているな、と前から思っていた。
『え、じゃああの後送って貰って真田さんと?
マジでヤッたの?』
それは三浦さんではなく、同じように派遣で営業事務で来ている小林さんだと思う。
そして、真田さんって…。
うちの部には真田という名字は零斗しか居ない。
嫌な予感で心臓が早鐘を打っている。
『…うん。最初は困るって言われたんだけど、私は真田さんが好きだから遊びでもいいって言って。
それでそのまま…』
『じゃあ真田さん本田さんとは別れないんだ』
私の名字の本田という名前が出て、やはりこれは零斗の話題なのだと突き付けられる。
座っているのに、立ちくらみがする。
『多分…。とりあえず、今夜また会って話そうって真田さんに言われて』
『そうなんだ。それって脈有るかもしれないよ?
本田さんとは別れるから付き合ってって話かもしれないし』
『そうかな?あまり期待しないでおく』
二人はトイレから出たのか、声が遠くなり静かになった。
用は足さずちょっとしたメイク直しだったのかな。
もう大丈夫かな?と、私はそっと個室から出る。
もし今の三浦さん達の会話が本当ならば、零斗は夕べ三浦さんと浮気したのだろう。
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