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放課後になるとタイムラインはさらに盛り上がっていた。『#狼狩り』はなかなか面白い流れになっている。
画面をスクロールしていた指を止めて、俺は後ろの席の真人を振り返った。鈍色がかった真人の短髪が、わずかに開いた窓から吹き込む涼やかな秋風にそよそよと揺れている。
「なあ真人、今夜ヒマ?」
「明日なら」
想像通りの素っ気ない返事に、俺は大袈裟にうなだれて落胆してみせた。
「明日じゃダメなんだよなぁ。だってほら。満月だからさ、今日は」
下を向いたままの真人のおでこに画面を向ける。
「今夜のこれ、一緒に行かね? 真人、水月南中出身だろ? 近いじゃん」
見せたのは、画面に表示した『#水月市#狼男駆除 水月南公園入り口20時集合!』という投稿だ。
日直の仕事で日誌を書いていた真人は、顔を上げて画面をひとときじっと見つめてから、再び手元に視線を落とした。
「行かねー」
「えー。人を脅かす害獣駆除っていう、れっきとした社会奉仕だぜ?」
真人がため息を吐いてシャーペンを置いた。再び俺に向いた切れ長の目が細められる。
「翔流は、それ全部信じてるのか?」
制服の襟の隙間からきらりと金色に光るチェーンが垣間見えた。耳にもピアス。真人はいかつい雰囲気があるくせに、まともなことしか言わない。付き合いも悪い。
「まあ、こんだけ大勢の人間が言ってんだから本当だろ」
「……行くのは勝手だけど、ちゃんと考えろよ」
日誌をパタンと閉じた真人は、席を立って教室から出て行った。
つれない奴め。心の中で文句をたれつつも、嫌な気がしているわけではない。真人はドライではあるが根は優しくて、一緒にいると気楽で心地いい奴なのだ。
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