今夜、月というものが

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僕だって惑星(ほし)の画像くらい見た事はある。でもそれは何光年も離れた、目で見る事は出来ない星。 縞模様だったり茶色かったり白っぽかったりするその星達は、空気の代わりに危険なガスで覆われていたり、暑すぎたり、水が無かったりで僕らは住む事が出来ない。 どの星も、見た目からして僕らの地球とは違う。 だって地球の画像は青くて白くてキャンディーみたいに綺麗なんだ。 北極と南極から広がる白い氷が、星全体を砂糖みたいに包んでいて、その向こうに透けて見えるのは青い海。 その中に所々、小さなチョコチップみたいに浮かんでる丸いものが、僕らが暮らす陸地さ。 魔法と科学で守られた星なんだ。 だから人が住んでいない星とは見た目から違うのは当然。 月もそんな星の一つなのは分かってるけど…… それにしても僕の想像とは違っていた。 だって昔は普通に空に見えたんだよね? お話や歌の題材になったり、ルナみたいに人の名前にも使われたりしてたんだよね? それなのに。 まるで絵の具で塗ったみたいな灰色で、しかもマシンガンで撃たれたみたいにでこぼこじゃないか。 お化けが住んでても不思議じゃない。こんなのが空で光ってたら絶対怖いよ! 『──月面にあるでこぼこはクレーターと呼ばれるもので、隕石がぶつかって出来たものです。 この写真ではやけにはっきり見えてしまいますが、実際に肉眼で観測する時には全体的に白く黄色く輝き、美しいとされています』 ……ほんとかなあ。 『そしてこの月の光には、魔力があるとされていたのです』 魔力?
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