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俺の恩人でもあるゴウドーさん。
奴隷の子供だった俺が貴族の従者になるきっかけを作ってくれた人なのだ。
ゴウドーさん、元々は魔法使いではなかったが、俺の力で魔法使いにしてあげた。
35歳のおっさんだったが、俺の魔法で18歳の肉体とイケメンにしてあげたし。
そんなゴウドーさんが、俺に頼みがあるらしい。
これ以上、俺に何を望むのか。金か? 女か? ギャンブルで借金でも作ったのか、やばい筋の女に手を出したのか。
「ゴウドーさん、これ以上は料金をもらいますよ」
「え?」
「確かにゴウドーさんは僕の恩人です。しかし、その恩は十分に返したと思うのですが」
「そうですね。しかし、あの、頼みと言うのは私の事ではないのです」
「じゃあ、誰の」
「マリエヌさんです」
「マリエヌさんの」
「はい」
マリエヌさんをカンデン王国から連れて来たのは俺だ。その頼みとやらを聞いてみるか。
「で、どんな頼みですか」
「マリエヌさんが『どうして私は魔法使いじゃないのかしら』みたいな事をですね、私をちらちら見ながらぶつぶつ言うのです」
「そりゃあ、マリエヌさんはカンデン民族ですから魔法は使えませんよ」
「それはそうですが」
この大陸には7つの民族があり、それぞれの民族が王国を作っている。
で、魔法使いになれるのは何故か知らないがハリヤマ民族だけらしい。
まあ、ハリヤマ民族だからといって全員が魔法使いの素質があるわけでもないけど。
「で、どうしてマリエヌさんは魔法使いになりたいと」
「おそらく、魔法使いじゃないと魔道具が作れないからですかね」
「……確かに。でも、マリエヌさんは設計が好きなはずですが」
「魔道具を作りたくなったのか、単純に魔法使いになりたいのか分かりませんが、マリエヌさんも魔道具を作れるようになれば助かります」
「そうですか?」
「はい。私はエイジ様の100分の1も作れないので」
「え?」
「魔導飛行機なんて作るのに3ヶ月は必要ですから」
「僕は1日ですけど」
「それはエイジ様が規格外だからだと思いますけど」
「ふむ」
まあ、俺は宇宙空間の魔素を取り込んでるしな。
「だからマリエヌさんも魔法使いになれば生産量が倍になると」
「そうですね。私は魔力電池や魔力バッテリーを作るのに忙しいですし」
「なるほど」
「それと、これをお願いします」
「ん?」
ゴウドーさんに渡されたのは魔道具とかの注文書。
「これを僕にお願いとは」
「在庫が減ってますので」
「在庫が減ったなら作れば良いのでは」
「ですので、お願いします」
「僕が作るの?」
「はい」
「どうして」
「私とマリエヌさんが作っても、その注文数は間に合いません」
「そうなの?」
「はい。私が同じ時間で作れる量はエイジ様の100分の1。マリエヌさんも作ったとして50分の1です」
「うーん」
なるほど。生産が間に合わないと。
俺が本気でフル生産したらゴウドーさんの1000倍は作れるのは事実。
しかし、俺は金の卵を産む鶏ではないのだ。
産めと言われて、作れと言われて「はい」と言う男ではない。
ならば、魔道具が作れる魔法使いを増やせばいいのでは。
「ならば、魔法使いを増やしましょう」
「え?」
「ゴウドーさん、弟子を取りましょう。20人くらい」
「弟子を20人?」
「ゴウドー師匠、格好いいですね」
「あの、要するに魔道具を作る魔法使いを20人雇え、と」
「そうです」
「えっと……魔道具作りの魔法やノウハウを広めてよいので?」
「そこは魔法労働契約書を作るのです」
「魔法労働契約書?」
「はい。ゴウドー魔道工業で覚えた魔法やノウハウは他言禁止、転職しても使わない。そのような契約です」
「なるほど。しかし、魔法使いは高収取りのエリートが多いです。そんなに高い給料を払うのは無理かと思うのですが」
なるほど。安い給料で働いてくれる魔法使いか。
「分かりました。安い給料でも文句を言わない魔法使いを20人、何とかします」
「何とかできるのですか?」
「当たり前です。僕を誰だと思ってるのですか」
「え?」
「人には3種類あります」
「3種類?」
「そうです。ホトトギスが鳴かぬなら鳴くまで待つ人、ホトトギスが鳴かぬなら鳴かせてみせる人、ホトトギスが鳴かぬなら殺してしまう人。の、3種類」
「あの、ホトトギスとは」
「この場合、安い給料でも文句を言わない魔法使いのことですね」
「はあ」
「で、僕は」
「ホトトギスが鳴かぬなら鳴かせてみせる、ですね」
「そのとおり」
さて、働き者のホトトギスを捕まえに行きますか。
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