55

1/1
前へ
/61ページ
次へ

55

カンデン王国 その王国はハリヤマ王国の北側にある王国で、機械科学が発展していると言われている。 機械科学の才能ある者が偉くて地位が高い。 カンデン王国の国王は26歳で、5年に1度のカンデン王国機械科学コンテストで優勝して国王になったのだ。 国王が機械兵器の設計図を書き、その機械兵器を国をあげて試作製造している。 その進捗状況の報告書を読む国王。 「宰相」 「はい」 「これによると、俺が試算した性能の半分以下の物しか作れないらしいが」 「はい。恐れながら改善方法を国王様にお伝え願えたらと、責任者から頼まれております」 「うむ、どのような改善方法なのだ」 「はい。国王様が書かれた設計図や計算式が難しく、できれば国王様自ら現場で指揮をとってもらえたら、と」 「おい、そこまで俺がやるのか?」 「いえ、それは」 「俺がいないと何もできないようでは、この王国の発展はない」 「はい」 「もう少し頑張らせろ。どうしても無理なら俺が現場に出る」 「分かりました」 国王の執務室から出た国王は、ある部屋へ入った。 そこには若い女性が1人。 ドン! と壁を蹴るカンデン国王。 「ひっ、ひえっ!」 「おい、あの機械兵器の設計図と計算式が難しく半分以下しか理解できないと文句を言われたぞ」 「す、す、すみません、お兄様」 「お前は馬鹿なのか?」 「ひ、ひえっ?」 「普通の奴でも理解できる設計図や計算式を書けと何度も言わせるな!」 「ひ、ひゃい、ご、ごめんなさい。で、でも」 「でも、何だ」 「あの設計図と計算式が分からないって、信じられないっていうか、分からない人が馬鹿っていうか」 ドン! と壁を蹴る国王。 「ひえっ!」 「俺も馬鹿だと言いたいのか?」 「とっ、とんでもないでふ」 「俺が理解できるまで教えろ」 「ひゃい」 今のカンデン国王は妹が設計製造した機械兵器で機械科学コンテストで優勝し、カンデン国王になったのだ。 その事実は国王と妹しか知らない。 小さなころから妹が天才だと気づいた国王は、そんな妹を洗脳して自分に絶対に逆らわないようにしていた。 それから延べ数十時間、妹からレクチャーされてやっと理解した国王は機械兵器製造現場へと向かった。 現場責任者に出迎えられる国王。 「これはこれは国王様、御足労ありがとうございます」 「うむ。お前たちがどうしてもできないらしいからな」 妹から教えてもらったことを偉そうに現場で教える国王。 「なるほどでございます」 「理解したか?」 「理解できました」 「試作機の完成、楽しみにしているぞ」 「ははっ」 意気揚々と王宮へ戻った国王。 宰相から来客を告げられた。 「ハリヤマ教団の総帥と申す者が国王への謁見を求めています」 「ハリヤマ教団、そんな訪問団が来る予定があったか?」 「いえ、ハリヤマ教団総帥1人で来てます」 「1人、でか?」 「はい」 「そのソウスイとやらはハリヤマ教団を代表して来たのだな」 「ハリヤマ教団の代表らしいです」 「護衛もなしに1人で来るとは、神の力で護られていると思っているのか、頭がおかしいのか」 「はて。しかし、ハリヤマ国王の紹介状を持ってましたが」 「ふむ。身元は確かなのだな」 「そのようです」 「そうか、通せ」 「その、10歳くらいなのです」 「ん?」 「ハリヤマ教団総帥は見た目が10歳くらいの子供です」 「……スパイからの報告書に書いてあった、あの子供のことか?」 「そのようです」 「スパイの作り話ではなかったのか」 「そのようで」 「しかし、子供が1人でハリヤマ王国からここまでどうやって来たのだ?」 「それは、私には分かりませんが」 「まあ、そうだな」 「はい」 「まあよい、通せ」 「はっ」 接見の場に現れた子供は「ハリヤマ教団総帥のエイジです。よろしく」と、ペコリと頭を下げた。 ムッとするカンデン国王。 「こ、これ、国王の面前である。膝をつかぬか」 と、宰相。 「え? 僕はハリヤマ様の使徒で特使ですよ」 「無礼な! ハリボテの偽神獣の使徒がカンデン王国の国王と同格だと、貴様は言うのか」 「うーん。逆に聞きますけど、カンデン国王はそんなに偉いの?」 「偉い、当たり前だ」 「ハリヤマ様の使徒より?」 「ふん。偽神獣のくせに何を言うか」 「ハリヤマ様が本物の神獣なら僕のほうがカンデン国王より偉い?」 「本物なら同格かもな」 「ふむ。どうしたら僕が本物のハリヤマ様の使徒だと信じます?」 「すごい魔法を使ってみろ。使えるならな」 「すごい魔法」 「そうだ、できるはずがないがな」 「宰相さん」 「何だ、今さら謝っても無駄だぞ。お前は不敬罪で死罪だ」 「そんな事を言うお前はモンスターだな」 「あ?」 「お前は人に化けたモンスターだ! ハリヤマ様、ハリヤマ様の御力でこいつを黒髪黒目の奴隷にしてください」 金髪で碧眼のカンデン王国宰相は、黒髪黒目の奴隷になった。 「奴隷の分際で頭が高い、伏せろ」 「はい」 土下座する宰相。 ザワつく謁見の間。 「な、何をした!」 叫ぶカンデン国王。 「カンデン王国の宰相はモンスターが化けてましたよ」 「は?」 「それを見抜いたハリヤマ様が僕を通じて神力を使いました」 「ふ、ふざけるな! そんな非科学的な事を信じられるか!」 「いえ、ハリヤマ王国は魔法使いのいる国ですけど」 「ぐぬぬっ、この者を拘束しろ!」 「やれやれ、皆んなモンスターだね」 その場にいた者は国王も含め、黒髪黒目の奴隷になったのだった。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加