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カンデン国王の妹、マリエヌさんをハリヤマ王国へ連れて来て、ゴウドーさんに世話をしてもらうように頼んだのだけど。 何やらゴウドーさんが困っているらしい。 「エイジ様、マリエヌさんの言うことがちょっとしか分からずとても困ってます」 言葉の問題なのか。 「ゴウドーさん、ジゴク大陸共通語のジゴク語で会話できないの?」 「いえ、ジゴク語なら日常会話くらいはできますし、マリエヌさんはハリヤマ語も上手です」 「ん? それなら何がとても困るのかな」 「設計図や計算式の話をされても私にはちんぷんかんぷんです」 「なるほど」 そっちか。 「なので、エイジ様が手取り足取りマリエヌさん教えてもらえたらと」 「ゴウドーさん」 「はい」 「若くて美人のマリエヌさんに僕が手取り足取りしたらどうなると思いますか」 「え? それはマリエヌさんが喜ぶかと」 「エリルが怒ります」 「え?」 分からないかな。 「エリルに僕とマリエヌさんとの浮気を疑われます」 「そうですか?」 「そうなんです。だからゴウドーさんにマリエヌさんを頼んだんです」 「じゃあ、エリルさんに説明すれば」 若くて美人のマリエヌさんと俺が密室で勉強会をするってか? 「疑われるようなことは僕はしません」 「子供のエイジ様がマリエヌさんと2人きりになって、そこから浮気になりますかね?」 「なるんです」 「はあ。では、マリエヌさんはどうしたら」 「好きに研究開発をさせたら良いでしょうに」 「そうしてるんですが、常に意見を聞いてくるんです」 「はあ」 そうか、マリエヌさんは自分の判断で物事を進められないのだな。兄のカンデン国王から洗脳されてたっぽいし。 なら、ゴウドーさんがマリエヌさんに手取り足取り指導できればいいのでは。 こういう時のために俺は能力付与魔法も新規開発しているのだ。 俺の機械科学技術に関する知識を7割くらいゴウドーさんに付与してみるか。 軍事兵器や宇宙空間の魔素、宇宙兵器関連の知識を渡すと流石に危険かもしれないけど、スマホや魔道具、魔導飛行機や魔導ロボットくらいの知識なら大丈夫だろ。 「ゴウドーさん」 「はい」 「マリエヌさんに手取り足取り指導できる能力が欲しいですか?」 「え?」 「いらない?」 「えっと、欲しいと思えばそんな能力をもらえるのですか?」 「もちろん」 「なら欲しいです」 「では能力を付与します」 「それ、痛くないですよね?」 「もちろんです」 いや、知らんけど。脳がオーバーヒートして気絶くらいするかもしれんけど。 「本当の本当にですか?」 「ハリヤマ様に誓って」 「分かりました。お願いします」 「はい」 ゴウドーさんに能力付与魔法をかけた。 「おっ? お、おお! スマホや魔道具、魔導飛行機やロボットとかの設計図や計算式とかが頭の中に次々と浮かんできますよ」 「ゴウドーさん、大丈夫?」 「え?」 「頭が割れそうに痛いとか」 「いえ、別に」 「ふーん」 人間の脳って凄いんだな。これだけ急激に脳へ情報提供したのに平気とは。 まあ、人間は脳の3割以下しか使ってないとか聞いたことあるもんな。 能力付与が無事に終わった。 「ゴウドーさん、終わりました」 「ありがとうございます。これでマリエヌさんに手取り足取り指導できそうです」 「僕もいろいろ忙しいので、これからはスマホや魔道具の生産販売とかお願いします」 「分かりました」 「それと、僕の渡した知識を武器や軍事的な物には使わないでください」 「なるほど、約束します」 「もし、約束を破ったら」 「え?」 「ゴウドーさんの知識をすべて奪いますからね」 「……あの、それって何も考えられなくなるみたいな」 「そうです。ゴウドーさんは死ぬまで赤ちゃん状態になりますので」 「……絶対に約束は守ります」 「お願いします」 「はい」 ハリヤマ国王から呼び出しがあったので王宮へ。 「こんにちは、国王」 「うむ。しかし、俺を国王と呼び捨てにする子供はお前くらいだぞ」 「そうでしょうけど、僕はハリヤマ様の使徒ですので」 「本当にお前がハリヤマ様の使徒なら国王の俺と同格かもな」 「ハリヤマ様は本物です」 「ふっ。お前、いや、ハリヤマ様に逆らうと何があるか分からん。本物と認めるしかないだろうな」 「ありがとうございます。それで僕への用事は」 こんな世間話なら電話でいいのに。 「カンデン王国でやらかしたらしいな」 「国王の耳に入りましたか」 「喧嘩をしに行ったのか?」 「とんでもない。ハリヤマ様の使徒として表敬訪問です」 「そうか」 「はい」 「ほどほどにしておけよ」 「僕は子供なので、ほどほどがよく分かりません」 「そうか」 「はい」 「久しぶりに握り寿司が食べたくなった」 「そうですか」 「極上を頼む」 「10人前ですね」 「うむ」 握り寿司の注文ならメールでしてくれよ。 まあ、いいけど。 俺は国王専属の宅配便ではないが、用事をしてあげるとお駄賃がもらえるからな。  
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