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「正直に言いますとこの事件、今の時点で大方真相は判明しています。あとは然るべき所を確認するだけです。だから、ご自宅を引っ搔き回すような真似はしませんので、安心してください」
「…………!」
後頭部を搔きながら発せられた都子の言葉に、皆が口をあんぐりと開けていた。沈黙は十数秒続いた。それを破ったのは吉彦だった。
「いいでしょう。そこまでおっしゃるなら、二時間だけ差し上げます」
「ありがとうございます」
都子の声は平坦だった。ただ、その口角が僅かだが不敵に吊り上がっているのを、冬助は見逃さなかった。
5
出雲崎家に侵入した空き巣は、何を盗って行ったのか。
真実を求める捜索は手分けして行われることになった。一階担当は都子、二階は冬助と決まった。吉彦の提案で、探偵と助手には出雲崎家の人間が一人ずつ付き添うことになった。赤の他人が見えないところで自宅を物色しないか、監視役をつけたいとのことだった。
吉彦と祭は放蕩娘のお説教タイムということで、別行動をとることになった。
冬助は手始めに、二階で最も高価な物が並んでいそうな、家長吉彦の書斎から捜索することにした。付添人は長男国正だった。狐顔の青年は、
「お姉さんの方が良かったなあ」
と口をとがらせつつ、広い二階を案内してくれた。
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