第1話 無欲な空き巣は何を盗む

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「正直に言いますとこの事件、今の時点で大方真相は判明しています。あとは然るべき所を確認するだけです。だから、ご自宅を引っ搔き回すような真似はしませんので、安心してください」 「…………!」  後頭部を搔きながら発せられた都子の言葉に、皆が口をあんぐりと開けていた。沈黙は十数秒続いた。それを破ったのは吉彦だった。 「いいでしょう。そこまでおっしゃるなら、二時間だけ差し上げます」 「ありがとうございます」  都子の声は平坦だった。ただ、その口角が僅かだが不敵に吊り上がっているのを、冬助は見逃さなかった。           5  出雲崎家に侵入した空き巣は、何を盗って行ったのか。  真実を求める捜索は手分けして行われることになった。一階担当は都子、二階は冬助と決まった。吉彦の提案で、探偵と助手には出雲崎家の人間が一人ずつ付き添うことになった。赤の他人が見えないところで自宅を物色しないか、監視役をつけたいとのことだった。  吉彦と祭は放蕩娘のお説教タイムということで、別行動をとることになった。  冬助は手始めに、二階で最も高価な物が並んでいそうな、家長吉彦の書斎から捜索することにした。付添人は長男国正だった。狐顔の青年は、 「お姉さんの方が良かったなあ」  と口をとがらせつつ、広い二階を案内してくれた。
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