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写真の出雲崎夫妻からは、確かに苦労が滲み出ていた。だけどそれだけではない。福子夫人は今と同じように明るく微笑んでいるし、吉彦もぎこちないが笑っている。幸福そうだった。
「正直祭や助手くんがうらやましいよ。僕の大学時代なんて、ほぼ司法試験の勉強だけだったからね」
「探偵助手も楽じゃないですけどね」
リアルが充実してそうな女の子と同じにしてもらっては困る。こちとらスマホを捨てられ、バイトを強要された挙句、その採用試験とかこつけてゴミ屋敷の清掃をさせられた身だ。というか労働自体が本望じゃないし。
「贅沢言うなよ。あんな美人探偵の助手なんて役得じゃないか」
「中身はおっさんですよあの人」
「おっさんってシャーロックホームズだろ?」
「くたびれたヘビースモーカーのアル中ですけど」
「ホームズも薬物中毒だから、ある意味リスペクトだね」
「そんなところリスペクトしなくていいわ!」
ツッコんでから、口に手を当てる。いかん。こんなことをしている場合ではない。何が盗まれたかを調べるのだった。咳払いをして、取り直す。早く帰る為にも、さっさと仕事を終わらせなければならない。そう意気込んで、国正と共に書斎、寝室、子供部屋(祭のもの)、物置を探索する。
だが結局、目ぼしい成果は得られなかった。
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