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「父さんの言い分もあながち間違いではないんだよね。僕らだって空き巣に入られて、何もしなかったわけじゃない。探したんだよ、盗まれたものをね。この家に長く住んでいる僕らが探して何も見つからなかったんだから、探偵さんが簡単に見つけ出せるとは思えないな」
仕舞いには国正にこう言われてしまい、冬助はすっかり心折れてしまった。
「成果はなしってことでいいかな」
出雲崎家長男の判断で、二階の捜索は終了した。
後の頼みの綱は、一階にいる探偵だけだった。
6
都子と福子夫人は、客間にいた。部屋の広さは十畳くらい。ピカピカのレザーソファが部屋の中央で向かい合い、その間にガラスのローテーブルが置かれている。至ってスタンダードな客間だった。
「二階はもうよろしいの?」
部屋を覗き込む冬助に、夫人が訊ねてきた。
「はい、一応……」
しょんぼりして答える。
「やっぱりだめだったよ母さん。部屋は被害に遭う前と何も変わってない」
「そうなのね……」
肩を落とす福子夫人——冬助はその姿に少し胸が傷んだ。
壁掛け時計は、午後十五時四十五分を示していた。吉彦から言い渡された制限時間は二時間。スタートしたのが十四時十五分くらいだったから、残された時間はあと僅かだ。
「どうですか探偵さん。順調ですか」
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