第1話 無欲な空き巣は何を盗む

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「そうですか。まあ、いいでしょう」  都子は像の頭を戻す。立ち上がって、 「本棚の上を詳しく拝見したいのですが、脚立を貸してもらえますか」 「わかりました。国正、吉彦さんの書斎からとってきてくれる?」 「めんどうだなあ」 「あ、俺が取って来ますよ」  挙手する冬助。自分でも信じられないが、二階で何もできなかったことを恥じての行動だった。  書斎から埃まみれの脚立を持ってくる。くしゅん!  はたきくらいかければいいのに……  舞い散るダストに内心愚痴をこぼしつつ、都子に脚立を渡す。 「この家の脚立はこれだけですか?」  埃を払いながら、探偵が訊ねた。 「はい。それだけです」 「そうですか。ついでにもう一つ。空き巣が入った時、この部屋に椅子やスツールなどは持ち込まれていましたか?」 「どうでしょうか、そういうものはなかったと思いますが……」 「ありませんでした。椅子やスツールどころか、何も持ち込まれてはいませんでしたよ」 「なるほど。わかりました」都子は指で頬を搔き、本棚の前に脚立を置く。「冬助、この上を見てくれ。私はハウスダストアレルギーなんだ」顎をしゃくる。 「えぇ……」  なんで俺が。ていうか、あんな不潔な空間に住んでいるくせによく言うわ。 「埃のかかり方に注意して見てくれ。違和感があったら言え。あ、それとこの本棚の正確な高さが分かる人います?」 「二メーター三十センチです」
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