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「そうですか。まあ、いいでしょう」
都子は像の頭を戻す。立ち上がって、
「本棚の上を詳しく拝見したいのですが、脚立を貸してもらえますか」
「わかりました。国正、吉彦さんの書斎からとってきてくれる?」
「めんどうだなあ」
「あ、俺が取って来ますよ」
挙手する冬助。自分でも信じられないが、二階で何もできなかったことを恥じての行動だった。
書斎から埃まみれの脚立を持ってくる。くしゅん!
はたきくらいかければいいのに……
舞い散るダストに内心愚痴をこぼしつつ、都子に脚立を渡す。
「この家の脚立はこれだけですか?」
埃を払いながら、探偵が訊ねた。
「はい。それだけです」
「そうですか。ついでにもう一つ。空き巣が入った時、この部屋に椅子やスツールなどは持ち込まれていましたか?」
「どうでしょうか、そういうものはなかったと思いますが……」
「ありませんでした。椅子やスツールどころか、何も持ち込まれてはいませんでしたよ」
「なるほど。わかりました」都子は指で頬を搔き、本棚の前に脚立を置く。「冬助、この上を見てくれ。私はハウスダストアレルギーなんだ」顎をしゃくる。
「えぇ……」
なんで俺が。ていうか、あんな不潔な空間に住んでいるくせによく言うわ。
「埃のかかり方に注意して見てくれ。違和感があったら言え。あ、それとこの本棚の正確な高さが分かる人います?」
「二メーター三十センチです」
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