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「ありがとうございます。ほら冬助、早くしろ」
「はあ、了解っす」
脚立に上り、本棚の上を見渡す。トロフィーやマスクには粉雪のような埃が積もっていた。賞状が入った額縁のガラスも同様だ。
右からゆっくりと、舐めるように見ていく。
「あ!」
「どうした」
「模造刀だけ、ちょっと綺麗です。誰かが触ったのかな」
他の記念品たちに比べて、模造刀にかかった埃は明らかに薄かった。それに、僅かだがさやの部分に握ったような手油の痕跡もあった。
「空き巣くんは、高級磁器像よりも刀の方にご執心だったってわけか」
「でも模造刀だとわかって、戻したのね」
「その時に、像が落ちた——」
頷く福子夫人と国正、冬助。都子はずっと上を見上げていて首が疲れたのか、頭を回してストレッチしていた。ほんとマイペースだなこの人。
「どうでしょう探偵さん。空き巣くんが残した痕跡が明らかになったけど」
国正は勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。無駄足でしたね——とでも言いたげだ。
「どうだ、二時間経ったが」
吉彦が戻ってきた。祭の姿はない。パパに怒られて傷心中といったところか。いずれにせよ、タイムオーバーだ。皆が都子に注目した。多分、期待はこもっていなかった。
「奥さん。捜査はこれで終了です。後日、お一人で事務所へ来てください。必ずお一人で、お願いします」
「は?」
細い目を見開き、啞然とする国正。
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