第1話 無欲な空き巣は何を盗む

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「結論から言います。奥さん、」 「——えっ?」  驚きの声を漏らしたのは冬助だった。 「なんで君が驚くんだ」 「え、だって、そんな」 「どういうことか、説明していただけるかしら」  意外にも福子夫人は冷静だった。感情の読めない微笑を浮かべている。 「家を拝見させてもらって、いくつか違和感を見つけました。例えば、客間の本棚です。空き巣は本棚の上を物色したとのことでしたが、それにしては奇妙な点がありました」 「そうだったかしら」 「本棚の上を物色する際、空き巣は使。これ、空き巣の行動としておかしいでしょう?」 「あまりピンときませんが」 「想像してください。仮に奥さんが空き巣だったとする。もしあなたが高さ二メーター三十センチの本棚の上を漁るなら、足場を用意するでしょう。私でもそうします。この高さがポイントです。人間はどんなに高身長でも、せいぜい二メーター弱が限度です。二メーターの人間が、二メーター三十センチの棚の上を漁ったらどうなるか。背伸びして腕を必死で伸ばして、ようやく届くくらいでしょう。つまり、というわけです」 「理解はできるけど、それが空き巣とどう関係するの?」
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