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「関係大ありですよ奥さん。これは空き巣がどんなに高身長でも、本棚の上の正確な物色には足場が必要だったということなんですから。でも空き巣は足場を確保しなかった。脚立は埃をかぶっていたので、使われた痕跡なし。椅子やスツールも運びこまれていなかった」
「ソファに登ったという可能性は?」
口を挟んだのは冬助だ。気になったのだから仕方ない。
「ない。ソファと本棚は離れ過ぎている」
確かに。本棚は部屋の隅に設置されていた。ソファの重量的にも、中央に位置するそれを台座にすることは難しいだろう。
「空き巣は本棚の上を物色する時、足場を使わなかった。もし本気で金目の物を探すなら、椅子でも何でも足場を用意したはずです。これが違和感その一。
違和感その二へいきましょう。割られた磁器像、これも考えてみたら奇妙です。磁器像は二百万とのことで、実際かなり精緻な作りだった。人の家はいってまで盗みを働こうという輩が、そんな価値のあるものを破壊した。これって変でしょう。リヤドロでしたか、磁器像のメーカー。それを知らない私やそこの助手ですら破片を見ただけで、価値の高いものだとわかった。空き巣がそれをむざむざと破壊したとは考えにくい」
「磁器像を壊したのは、模造刀を取ろうとしたからでは?」
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