第1話 無欲な空き巣は何を盗む

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「それが違和感その三です。唯一空き巣が触った痕跡のあった模造刀、これも変だ。空き巣は金品を求めて出雲崎家に侵入したはず。なのに、。もしこの犯人が空き巣を食い扶持にしているなら、転職を勧めてやりたいくらいですよ。しかも模造刀を取ろうとしたことで、結果的に何十倍もの価値がある磁器像を破壊してしまっている。はっきり言って、この空き巣は大馬鹿者だ」 「犯行に慣れていない、素人さんだったんでしょう」 「違和感その四です。。それどころか、怪しい男の姿すら近隣住民に目撃されていない。侵入方法も開け放されていた風呂場の窓からという、事前偵察を要する計画的なものでした。不思議ですね、」 「…………そうね」  福子夫人は俯き、消え入るような声で同意した。 「ですがこれら四つの違和感も、最初に私が言った結論を前提とすれば、むしろ真実を支える根拠となります。出雲崎家に空き巣は入っていない。つまり、出雲崎家を荒らしたのは空き巣ではない。順に考えていきましょうか。
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