第1話 無欲な空き巣は何を盗む

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「馬鹿じゃないの」真っ白な灰となって今にも吹き消えそうな弟を、茨はいつの間にか冷蔵庫から取ってきた缶ビール片手に、一笑に付した。「スマホなんて、また買えばいいじゃない」 「あのな姉貴、俺は大学生だぞ。スマホなんて高価なもんポンポン買えないんだよ」  冬助にとって、スマホを破壊されて一番困るのは、もう一度買い直すにあたっての機種代だった。内部データはバックアップがあるので、そこは安心だった。 「バイトくらいしなさいよ。っていうか——」茨は何か思い出したかのように、顎に人差し指を当て「昨日ママが言ってたわ『通信料も自分で払え。あと小遣いも今月からなし』って」 「そ、そんな。非道すぎる。今日から俺、どうやって生きていけば……」 「だから、バイト——」 「嫌だ! 断固として拒否する。働きたくない! 俺は掃除とゲームだけやって生涯を終えるんだ!」  床を転げまわり、駄々をこねる冬助。 「あんたねえ……」    憐憫の眼差しを向ける茨。 「大体あんた、十九にもなってお小遣いもらってるの、恥ずかしくないわけ?」  正論が耳に痛い、とでも思ったか。 「全然。むしろ、そんな自分を誇りにさえ思うぜ。社会に迎合しないロックンロールさにね」 「開き直るな!」  ドレスをはためかせ放たれた、茨の強烈な前蹴りが冬助のボディに炸裂した。 「痛え! なにすんだ!」 「なによ、労働に彼女でも取られたの?」  茨はソファに腰を落ち着けて足を組む。
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