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  陽子は、お昼を食べたら、お稽古に行くと言った。文化ホールを稽古場にしている。 仁は、ここに居たら邪魔になると思い、すぐに着替えた。仁が着替えている時、陽子がお昼食べていきなさいと指示した。  仁は、ありがとうございます! と応えた。断ったら気を悪くすると思ったからだ。陽子は、嬉しそうに笑った。二人は、ギョーザ、味噌汁、漬物、目玉焼きの食事を済ませた。二人とも昨夜の話は避けた。  昨夜のことを話題にすると、面倒になると考えた。 仁は、手早く食べて椅子から立ち上がった。玄関に行った。何か陽子に言わなくちゃ、と思う。ドアを開け、外に出た。  仁は、振り返って陽子に向かって、「ありがとうございました。一生忘れません」と礼を言った。 陽子は、少し困った表情になり、言いにくそうに、「私で良かったの?」と質問した。
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