苦くて甘い記憶

1

　　
　　ふだんの仁は、暗い顔をして俯いている。けれど今の仁は、子供の頃の明るさを取り戻していた。

　一週間が経過した。仁は、ずっと陽子のことばかり考えていた。陽子は、どうしているだろう？今は、何をやっているだろう？この前のことをどう思っているだろう？

　仁の頭の中にいろんな疑問が渦巻いていた。
しかし、あれから陽子は一度も店に来なかった。どうして店に来てくれないのか？

　仁は、何度かスマホで電話しようと思った。しかし、何か心に引っ掛かるものがあり、ためらっていた。
陽子は、もう2度と店に来てくれないかもしれない。そう思うと未来が暗い闇に見えた。