苦くて甘い記憶

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　　仁は、子供の頃から人に頭を下げるのが嫌いだった。だからそうしなければいけない仕事には就かなかった。例えば、喫茶店のウェイターとかコンビニの店員とか営業とか苦手だった。

　仁は、生意気だったので、なんで自分が頭を下げなくちゃいけないんだ！　なんて意識があって周りに馴染めなかった。自分を特別な人間だと思いたかったのかもしれない。

　しかし、そんな仕事しかない時は、仕方なくそういった仕事をした。仁は、鳥取市内の繁華街にある24時間営業の喫茶店でウェイターをしていた。

　店の名前は、｢希望｣だった。仁は、その店名を見た時、違和感を覚えた。希望なんてない自分なのに、希望という店に勤めるなんて皮肉だ。