いわゆる新陳代謝、スイートアーモンドより

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   ○  健介は洗面台の鏡に映る顔の出来栄えを見て、心中で良しと述べる。最近はインスタでも人気のチャイボーグメイクにハマっている。  中国美女に多い、人間離れしたサイボーグみたく美しくなるメイク法だ。健介は男として人間離れした美を得たいと思い実践している。  最近では可愛い女子みたいに女装する男もSNS上で増え、各々が思う美を自由に演出し易くなった。この時流はこれからも加速すると健介は踏んでいる。  流れは人間それぞれが美をまとい作品と化す世の中へつながると予測する。生物としてではなく、作品としての人間だ。  メイクを終えた健介は、常温で保管した無調整のアーモンドミルクをカップに注ぐ。出かけるまでの純白で小さな休息だ。  アーモンドミルクは無農薬のカルフォルニア産のものという拘りもある。  スマホのインカメを作動させ、改めて自身の顔の完成度を確認する。  ずっと嫌だった、不細工と罵られる顔の面影は微塵もない。真っ白で蛇のぬらりとしたような艶の美すらも彷彿とさせる、完璧な美しい男性が微笑んでいる。  さて、と軽く呟き出かけようと決めた。今度受けたい美容医療の施術があり、稼がないといけない。  完璧なメイク、ファッション、ヘアスタイルを、玄関にある全身鏡で改めて確認し外に出ようとした。  外が突如騒がしくなる。 「火事だ」  焦りから玄関の扉を開けた瞬間、火焔が健介の部屋に吹き込み、彼を飲み込む。  針千本を灼熱で熱して全身の肌の毛穴一つ一つを刺し通すような、衝撃的な痛みと熱さに包まれた。  健介は意識を失う瞬間、何者かの顔を見た。煙のようなぼやけた輪郭を持ち、赤黒いカサブタだらけの肌、鼻はもげ、唇は半分失い青紫色に干乾びている。
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