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この極限状態で俺が思いついた作戦は三つ、まずは時間帯による相手の状況変化である。
というのも、
「監視カメラを使っていないのであれば観察は怪能力で行っている」
ことが推測できて、
「怪能力ならば人間体の状況に左右される以上、観察できない時間が生まれる可能性が高い」
ことに気がついており、同時にスマホの電波は届かなくとも、現時刻は確認できることにも気付いていた。
更にここが彼の研究室であることを踏まえて、きっと構内のカフェあたりから観察しているのだろうと推測した俺は、「カフェの閉まる時間に監視の目が無くなるだろう」と狙いをつけた。
まあ実際はその前に観察を中止していたわけだが、賭けにも近い読みが成功すれば次なる作戦へと繋げることができる、それは「教授の能力を明確にする実験」だ。
とりあえず俺は自分の経験則から、彼にも「何らかの厳しい制限」が課せられているものと考察する、そしてこの部屋の状況証拠から一つの制限を割り出した。
それは彼が「その場から動けない」という致命的な欠点であり、彼はこの実験を行う上で大きなミスを犯していた、俺にこれが「実験」だと伝えてしまったことである。
これが実験である以上、「彼が配置した全ての仕掛けは彼が観察できる位置になくてはならない」、だとすれば必然的に部屋の中心から観察することになる。
しかしこの部屋は、「本棚がある来客用スペース」と「教授のデスクがある作業スペース」に分かれており、その間には仕切りになるカーテンが左右の隅に配置されている。
つまりどちらかのスペースの中心から観察している場合、このカーテンの裏側が死角となって監視の目から守ってくれるわけだ、見えなければ実験どころではないだろう。
そして俺は仕掛けの位置から、彼は「来客用スペース」の中心、「最初にノートがあったテーブルの上から観察している」と割り出した、デスク側のカーテンの裏で、そっと息を殺していたのである。
「(…よし、俺の実験は成功だ…!)」
ついでに仕掛けておいた実験、彼の足元に設置された醤油の池は何かに反応して揺らいでいる、俺はそれをデスクの上に立てかけたスマホのカメラで覗いていた。
スリープ設定を解除し、写真撮影のカメラを起動して自撮りモードにすれば、こちらから見えてあちらからは見えない状況を、電池が続く限り作り出すことができる。
まあそうしたら「俺がカーテンの裏にいる」ことはバレバレなのだが、実験である以上は彼もこの状況を見過ごせないだろう、我慢できず自らドアを開ける瞬間を、この死角から待っているというわけだ。
「(我慢比べといこうじゃないか…!!)」
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