NEWS1.忘れられた部屋

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いつにもまして乗り気な友人は、大学構内で秋原先輩について聞き回り、意地でも俺に謝罪させようと奮闘していた。 写真も無いのに名前と見た目の特徴だけで捜そうとする彼には、きっと何か別の思惑があるのだろう、そうでなければここまで執着なんてするものか。 「秋原コムギさんという人なんだけど…」 「女の子?知らなーい」 「その子かわいいの?」 「かわいい」 「でも知らなーい」 「キャハハ!」 確かに秋原先輩は俺が一目惚れしたくらいにはかわいいが、正直そこまでお近づきになりたいのかと言えば疑問に思う。 彼女はいつも冷めた目をしていて、与えられた業務だけをこなし、人にプライベートの話をすることなんてほとんどない。 私服も色気や飾り気なんてゼロであり、男の匂いどころか友達の匂いすらもしてこない、一般的に見たら関わりたくないタイプの人間だ。 「…そういえばお前なんで秋原先輩を誘ったんだよ?」 「なんでって?」 「そもそも結構勇気いるだろ?」 「まあー…なんかいけそうかなって」 「それだけで?…そこまでして彼女が欲しいかね…」 「いや、欲しいだろ無論」 「お前のそこだけはよく分からんよ…」 俺もクールな先輩ということもあって、未だに少し恐怖心を抱いている、何故か直感的にいけそうだと思わなければ、きっと誘いすらできなかっただろう。 「あー、はいはいあの子ね」 「お、教授知ってるんすか?」 「うん、俺の講義出てるから」 「やっぱここの学生だったんだ!」 そんなことを考えている間、新橋の方は調査に進展があったようで、ガッツポーズをしながら嬉しそうにこちらの方を振り返った。 「で、君はストーカーか何か?」 「いやいや、ちょっとこいつが用ありまして」 「だから無いって」 「おや、君は……」 「(知られてる…?)」 何故か俺のことを知っている中年の男性教授は、しばらくその場で目を閉じて思考し、「よし」と何かを決めると話を始めたのである。 「まず、その用とやらを聞こうか」 「よっしゃ!ソウマ話してくれ!」 「なんで俺なんだよ」 「と、本人は言っているが…」 「…何とか会わせてやってください!こいつはただ謝りたいだけなんです!」 「しかし、その気が無ければ逆効果ではないかね…」 「謝れないやつですけど、今回ばかりは男を見せなきゃならんのです!」 「確かに、そういうことは人生において重大な分岐点となるものだが…」 「あの、俺の意思は…」 この教授も思うところがあるのか、過去を思い返して感傷に浸りながら考える、もはや二人にとっては俺の存在など、力を使わずとも忘れてしまっているようだ。 「よし、それならば用のある君だけ会わせることにしよう。午後の講義の後に私の研究室に来たまえ、彼女には話をつけておくから」 「はい!え?俺は?」 「俺の意思…」 こうして必然的に友は除け者にされて、乗り気じゃない俺だけに約束ができる、さすがは大学教授だが、もう少し人の話は聞いて欲しいものである。
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