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第一話 王として
北小国ダザンの領域の先に、奇岩がある。
人の背の三倍は優に超えるであろう大きい灰色の岩場である。
もともとは聖域で、北から降り立ったと言われる天つ神が国つ神になった瞬間の地だと言われていた。だが降り立った神々に牙を剥いた獣のせいで、血の臭気と穢れにまみれ、今ではもう人の住まない魔の領地となり果ててしまったのだが。
領地として納めるにはあまりにも不向きなため、どこの国も所有しない。また曖昧な地域ゆえに、そこと向かい合う国の領内であっても人は付近に寄りつかない。
不毛の地。木も生えず、水も通らない。乾燥した寂寞の大地。
奇岩は北側全体を胎盤のようにまといつく。ダザンだけではない。北大国イースルもまた、奇岩に面した国であった。
北両国の領域が終わり、どちらでもない領域のはじまりの地点に、ぽつんと城が建っている。
廃れた印象の淀んだ空気のはびこる灰色の城塞。
ぐるりと四方を囲む岩塀の高みは、まるで来るものを拒み去るものを逃がさないかのよう。城、というより造りは塔に似ている。太い幹で、頂点に行くにつれ細くなっていく。
斜めに傾いた建物の不安定さ。そこに骨をうずめる運命にあるものたちの、悲壮な精神状態を示しているかのように思える。
ヘル監獄。
北の民の流刑地である。
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