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私は美人で性格もいい。ゆくゆくは金持ちの男と結婚してエリートまっしぐらな人生を送るはず。
ーーーそう、思っていた。
「九条さん。キミ、明日から来なくていいから」
「……え?」
私はいつも通り仕事場である市役所に向かった。が、席につくなり上司に呼び出された。
「キミ、今朝机に置いてあった紙見てないの?
アルファは全員クビだよ」
「アルファがクビ……?」
なにかの冗談かと思った。だって、アルファはエリートなんだよ? そんなアルファを全員クビにするって、会社はどうなるの?
「だったら私の代わりは? 私の代わりは誰がやるんですか!?」
怒るつもりもキレるつもりだってなかった。だけど、あまりにも理不尽すぎる上司の言葉に、私は声を張らずにはいられなかった。
「今日からオメガがキミの代わりだよ。この会社だけじゃない。今日から世界のエリートはオメガたちだよ」
「なんですって?」
思わず聞き返してしまう。
「もう話しかけないでくれ。荷物は全部置いていってくれ。それと今月の給料も無し。用無しアルファはさっさと消えてくれ」
「っ……」
私はクシャクシャになったゴミを投げられた。
今までこんなことがあればパワハラだと訴える事だってできたのに。それも、もうできない。
まさかベータである上司にまでゴミ以下扱いされるなんて屈辱だ。
こうして、私は職を失うと同時に、エリートであるアルファの地位もなくなった。
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