甘く蕩けるような愛で

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目を覚ませばいつものマンションの一室で裸で目覚め、日が高く将臣の姿は無い。服に着替えてマンションを飛び出し工場へ向かえばシャッターが閉まっていて、家へ向かえば表札は知らない苗字が掲げられている。 どうなってんだよ…親父は?お袋は??近所の人を見つけて聞こうとしたが、俺を見て悲しそうな顔をしている。話を聞けば融資をして貰えなくて心中していたと聞かされ、俺が家に帰るのも連絡取るのもダメだと言われ続けた理由がわかった。 「あぁぁぁああああ!!!」 膝から崩れ落ち地面を殴る。何度も何度も殴り、俺の両手は血が滲んでいて、近所の人がもうやめるよう言うが俺はこの感情を向ける先がわからない… 死に目に会えなかったばかりか葬式も出なかったどころか知らなかったんだ…ずっと二人で仕事してくれてると思ってたのに…!!! そんな男の番になって三人も子供を産まされた。産むところを公開までされて俺は本当にあいつのおもちゃだったのか… 雨が降り始め近所の人は俺を立たせて慰めるが耳に入らず、俺はふらふらと歩いてゆく。どれだけ時が経ったかわからないが、俺はいつの間にかあのBARの前にいて入るのも躊躇われ濡れたままずっと扉を眺めている。 CLOSEの看板を見つめながら、そのまま立ち尽くしていれば扉が開いてマスターが出てきて俺の手を取ろうとしたが血に濡れていることに驚いて腕を掴んで無理矢理中へと入れられた。
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