守る者

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守る者

3人はスタンドバイミーみたいに夜の住宅街を無言で歩いた 月はスーパームーンどころか普通の朧月だ 誰かが何か話さなきゃと雰囲気をお互い察するも 何も言えないままさっきの公園にたどり着いた 「わたし お姉ちゃん心配だから 自宅の様子見に行くね」 すみれちゃんと高菜ちゃんもなんとなくだけど わたしの家庭環境や葉子の家に逃げ込んだ事を知ってるっぽかったから 「うちらも同じ方向だから行くよ な!高菜」 とわたしの肩を叩いた 高菜ちゃんもにっこりうなづいた 高菜ちゃん家は駅前だけど すみれちゃん家は全然違う方向だろと つっこもうとしたが なんか優しい気持ちになり 2人の後をついていった 自宅付近がやたらに騒がしく 家前に着くと 顔面蒼白なお姉ちゃんが強くわたしに抱きついてきた こんな感情的なお姉ちゃんは久々だった 「大丈夫よ わたしがレンを守るから」 救急車や人混みがたかる中 わたしとお姉ちゃんは女性警察官に連れられ パトカーに乗せられた 窓から外をみると すみれちゃんと高菜ちゃんが レン レンちゃん といつまでも叫んでいた わたしの気持ちが少し落ちついたのは それから一週間後だった 警察署に連れられて 事件当日の話しを簡単に事情聴取され その後は施設のような場所に入れられた そこは綺麗なホテルの一室のようであり テレビもあり頼めばお菓子や漫画なんかも差し入れしてくれた 女性警察官と優しそうな刑事さんが来て 1日1回いろいろ質問をされた わたしたちのあの日の動向でなく 義理父の生活などをだ まだショックであまり話せないでいる わたしの矢面に立ちお姉ちゃんがほぼほぼ話しをしてくれた 警察の話しによると簡単に言えば事件はこうであった あの葉子がいなくなって お母さんが退院する日 葉子はわたしを喜ばせようと病院まで昼間お母さんを迎えに行ったようだ 看護師さんの話しだと2人でいったん自宅に帰ってお姉ちゃんを迎えに行って わたしと合流してご飯に行こうって計画だったらしい ここからはお姉ちゃんの聞いた声音と現場検証の見解と捕まった義理父の供述でしかないけど ほぼ確定らしい お母さんと葉子が誘うと お姉ちゃんは珍しくまともで喜んで支度していたらしい そこに泥酔した義理父が帰ってきた 玄関で葉子をみつけると押し倒して服を剥ぎ取った それを庇おうとお母さんはまた顔面を殴打され死亡した 死ぬまえに「ようちゃん逃げて」って叫んだ声はお姉ちゃんが聞いている 葉子は二階に駆け上がりお姉ちゃんの部屋に逃げ込もうとしたが捕まった 部屋前の廊下で葉子が乱暴されている声を聞き お姉ちゃんは何度も扉を開けようとしたが 葉子は乱暴を受け入れ「絶対出てこないで!お願いレンだけは助けてと」と叫び続けた お姉ちゃんは泣きながら部屋の内ノブに 紐や針金を巻き付けて封印した 声は震えて 身体も震えて でも自分の命は必ず守ろうとしたらしい わたしの為に 勇気ある行動だ お母さんは葉子を守ろうとして 葉子はお姉ちゃんとわたしを守ろうとして お姉ちゃんは自分の命とわたしの未来を守ろうとして 義理父の気配がなくなり 這うように扉を開けたお姉ちゃんの前には 服もボロボロの葉子が血だらけで死んでいた これが事件であった
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