最初で最後の一夜

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 ふじみやのことも大切にしていて、大手商社でのキャリアを蹴ってまでふじみやを継いだ。  誰よりも優しくて家族のためにいつも頑張ってくれるお兄ちゃん。  私はお兄ちゃんの妹に生まれて誇りに思うよ。 「――私、三谷須さんと結婚する」  だから、私にもできることをさせて欲しい。 「紫!?何を言ってるんだ!?」 「紫!!」 「私が三谷須さんと結婚したら借金帳消しになるんでしょ?するよ」 「そんなのダメだ!!紫が結婚するまで見守るって言ったけど、こんなのは絶対違う!」 「でも私だってふじみやがなくなるのは嫌。ここは生まれた時からある大事な場所なんだもの」 「だからって、紫が犠牲になることないんだぞ?」 「犠牲じゃないよ。あの人、私に気があるっぽかったし、大事にしてくれるかもしれない。 もしかしたら、私も好きになれるかもしれないでしょ」 「紫……」  恋愛する前に結婚なんてもちろん不安もあるけど、お互いのことをよく知ったら案外上手くいくかもしれない。  そう思い込みたいだけとも言えるけど、それでもいいの。  ふじみやを守れるのなら。 「紫……、本当にいいのか?」 「うん、そうさせてください」  私はずっと大事に守られてきた。  まだ学生の私にできることなんて限られてる。家族とふじみやを守るためには、きっとこれがベストなんだ。
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