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全く、兄妹揃って調子を狂わされてばかりだな。
でも、それが心地良いと思ってる自分がいることは確かだ。
『キリ、何とかするって言ったけど、まさか肩代わりするなんてことは』
「しねーよ。そもそも闇金に払ってたまるか。警察に突き出すに決まってんだろ」
『そ、そうか……ありがとう。ごめんな』
「いや俺も先に謝っとくわ」
『何が?』
「いや、殴られる覚悟をするって言ったほうがいいかな」
『え、どういうこと??』
「じゃ、そういうわけでまた連絡するから」
『あっキリ!?』
一方的に通話を切った。
とりあえずこれで紫の身は大丈夫だろう。
最初は馴れ馴れしくてなんだこいつ、と思ったけど、葵の色眼鏡で人を見ないところや柔軟に物事を捉えられるところ、本当に家族を大切に思っているところは素直に尊敬している。
本人に言ったことはないけど。
紫も俺には塩だけど、基本的には誰にでも愛想が良いし、実際店では看板娘として常連客に愛されている。
呆れるくらいのブラコンだけど、家族のためなら知らない男との結婚を決意してしまう芯の強さがある。
きっと紫は好きになったら、一途に想ってくれるんだろうなぁとか思ったりした。
「……あーー、マジでやばいな」
その相手は俺がいいなんて、本気で思ってる自分が。誰にも執着したことなんかなかったのに。
俺にこんなことを思わせた責任は、絶対に取ってもらおうと思った。
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