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「そんな用事より僕とのデートが優先だよね?」
「えっと、そうしたい気持ちは山々なんですが、兄から早く帰って来るように言われていますので」
「婚約者の僕より優先すべきことなんてあるの?」
段々三谷須さんの語気が強くなっていく。表情にも明らかに不快感が見えた。
「すみません、この埋め合わせは必ずしますから」
「待ってよ、紫さん。君のために予約したんだよ?フレンチもホテルもなかなか予約の取れないところで苦労したんだ。君が喜ぶと思ったのに、僕の気持ちを踏みにじるの?」
そんなこと言われても、私の予定を聞かずに勝手に予約したのはそっちじゃない。
そう言いたい気持ちをグッと堪える。
「僕の誘いを断るなんて、君にそんな権利があると思うのか?」
「……っ」
私はその時確信した。この人とは上手くやれない。
もしかしたら好きになれるかもしれない、って思ったけど無理だ。結婚しても幸せになんてなれない。
でも、この人と結婚しないとふじみやが……。
「〜〜っっ」
「泣いてる?どうして泣いてるの?泣く程嫌ってことなのか!?」
助けて、助けてお兄ちゃん……っ!!
「お前、僕のことバカにしてるんだろ!!」
よく知りもしない人との結婚なんて、やっぱりダメだった。私、どうしたらいいの?
助けて……!!
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