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キリさんと初めて会ったのはキリさんが高校生、私が小学生の時。
お兄ちゃんが連れてきたのがきっかけで出会った。
当時から人目を惹く端正な容姿は変わらずだった。子どもだった私は王子様が来たと本気で思った程。
「このチビが葵の妹?」
中身は全く王子じゃなかったけど。
キリさんはその時食べた鮭定食を気に入り、今でもよく食べに来る。
今みたいにカチッとしたスーツで来ることもあれば、ラフな私服で来ることもある。
何の仕事をしてるのか聞いたことあるけど、「普通のサラリーマンだよ」としか教えてくれない。
明らかに高級そうなスーツや腕時計してる人が、「普通のサラリーマン」なわけないのに。
大学生になってもこの人にとっては、いつまでも子どもなんだ。
だから悔しいので、私もただの常連客として扱っている。
「キリさんほぼ毎日来ますけど、彼女はいいんですか?」
「彼女?」
「昨日の夜、髪の長い綺麗な女性と一緒にいましたよね?」
「ああ……、あれ彼女じゃないよ」
キリさんは素っ気なく言う。
「仕事の人」
「そうですか」
女性に関係する言葉は大抵信じられない。
この人は昔からとにかくモテてきたようで、小学生の時から度々違う女性と一緒にいるところを見てきた。なのに「付き合ってない」だの、「彼女じゃない」だのいい加減なことばかり。
王子様どころかクズだった。
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