お兄ちゃんの親友

4/6

2607人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
「もしかして、妬いた?」 「っ、そんなわけないでしょっ」  クズでいい加減で、お兄ちゃんとは全然違うのに。  なのに初めて恋をした人で、唯一恋をした人。  子ども扱いしかされてないし、キリさんは誰にも本気にならない。だから不毛な恋だと悟ってだいぶ前に失恋済み。  それ以来未だに違う誰かと恋ができない。 「紫こそ彼氏は?」 「いませんけど?」 「紫ってどんなやつが好きなん?」 「優しくて誠実で家族を大事にするお兄ちゃんみたいな人です!」 「相変わらずブラコンだな……」  私が恋できないのはキリさんのせいではない。  お兄ちゃんより素敵な人がいないからだ。だってお兄ちゃんは最高なんだもん。 「キリ、紫のこと口説くなよー?」  厨房からお兄ちゃんが顔を覗かせる。 「口説いてねーよ。ほんとお前ら仲良すぎ」 「紫が嫁入りするまで俺がしっかり面倒見るって決めてるからな」 「大丈夫だよ、お兄ちゃん。私しばらく結婚なんてしないから」 「ブラコンシスコン兄妹……」  何と言われようが、お兄ちゃんより素敵な人なんていない。もし存在するなら結婚したいかも、って思うけどまだ当分いいかな。  まあ正直なところ、恋愛くらいはしてみたいって思うけどね……。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2607人が本棚に入れています
本棚に追加