お兄ちゃんの親友

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 キリさんが帰ったのと入れ替わりに、またスーツ姿の男性がやって来た。初めて見る人だ。 「いらっしゃいませ。一名様ですか?」 「はい」 「こちらのお席へどうぞ」  私は常連客の顔は全員覚えているので、多分初めてのお客さんだと思う。  キリさんと同じで持ち物が高級品ばかりだ。七三分けにセットされた髪はデキるサラリーマンという雰囲気を醸している。  彫りが深くて結構イケメンなんじゃないかと思うんだけど、なんか妙に私のことをジロジロ見てきて嫌だなぁ……。 「ご注文は?」 「君のおすすめはなんですか?」 「えっと、定番の鮭定食です」 「ではそれを」 「かしこまりました」  注文を取り終わってもじっと後ろ姿を見てくる。  何なんだろう?と背中に寒気を感じながら、ご飯をよそったりお味噌汁を注いだ。 「お待たせ致しました、鮭定食です」 「ありがとう」  ギョロリとした大きな目をしっかりと私に向け、そう言った。 「ごゆっくりどうぞ」と言って私は他の席の皿を片しに行く。あまり気にしないようにして、仕事に集中する。 「ごちそうさまでした」 「ありがとうございます」  お会計の時もやたらと見られているような気がした。 「ありがとうございました。またお越しください」 「あの」 「はい?」 「お名前聞いてもいいですか?」 「藤宮です」 「いえ、下の名前」 「……紫です」 「紫さん」
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