最愛の大切な人

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「実の母は病気で亡くなって、父は本妻との間に子どもができなかったから本家に引き取られた。古臭い家でさ、何が何でも跡取りが必要だったんだよ」 「そう、だったんですか……」  本当のお母さんは亡くされていたなんて。どう言葉をかけていいかわからず、ただ聞くことしかできない。 「家の中では愛人の子だって後ろ指さされた。父はそんな俺を厳しくしつけたし、六条の名に恥じない人間になれってそればっかり。 なのに外では六条財閥の御曹司として扱われる。どいつもこいつも六条に近づきたいって下心あるやつばっかだった。誰も俺の中身なんか見ちゃくれない。 一人を除いて」 「一人?」 「葵だよ。葵だけはただの六条桐光って人間として接してくれた」 「やっぱりお兄ちゃんって素敵!も〜お兄ちゃん以上に素敵な人なんていないよね!」  うっとりしていると、何故かキリさんに頬をつままれた。 「目の前にもいるだろ」 「えー?」 「とにかく、紫も出会った時から普通に接してくれたじゃん」 「いやだって知らなかったですもん」 「知ってたらなんか変わった?」 「え?いやー……」  びっくりはしたと思うけど、だからどうということはないかも。今日も色々驚くことばかりだし、正直あまりの格差に引け目に思うことはあるけれど。 「でもキリさんはキリさんだから、特に変わりませんよ」 「……そういうとこ」
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