最愛の大切な人

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 キリさんは私の左手を取ると、薬指にキスを落とした。 「紫のそういうところに惹かれたんだよ。ブラコンすぎるけど、自分のことより家族を大事にできる子で、きっと一途なんだろうなって。だからずっと好きでいてくれるかもって思った」 「キリさん」 「結婚して、ずっと俺のものにしたかった」 「……なんかブラックみを感じるのは気のせいですか?」 「そう?」  ニヤッと悪戯っぽく笑って私のことを抱き寄せる。 「指輪も勝手に決めて悪かったけど、変な虫がつく前に俺のものって証が欲しかったんだ」 「独占欲強すぎません?」 「俺も自分がこうなるなんて思ってなかった」  ……もしかしたらキリさんは、ずっと寂しかったのかもしれない。  家の中では愛人の子だと後ろ指さされて、外では上辺ばかり見られて。本当のキリさんのことを見てくれる人が、お兄ちゃん以外にいなかったのかもしれない。  胸がきゅうっと苦しくなって、気づけばぎゅーっと抱きしめ返していた。 「私は、どんなキリさんも好き。私もずっと一緒にいたい」  私はまだまだ子どもで何もできることなんてないけど、あなたのことを一生愛せる自信ならある。 「ずっと前から好きだったのは私の方なんだから」
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